商品企画はアイデアを出すだけが仕事ではありません。そのアイデアに合理性があり、ユーザーニーズは満たしていなことには「売れる」商品は作れません。たまたまヒットしただけの一発屋にならないためにも、商品企画プロセスの基本的な進め方をまとめました。
商品企画の進め方まとめ
ヒット商品を作ることは難しいですが、戦略を考えることで、失敗しにくい商品にすることは出来ます。闇雲にアイデアだけで勝負する商品はひとえに「運」がすべてです。将来のヒット商品を生み出すためにも、まずは失敗しない戦略的商品作りのプロセスをご紹介します。
商品企画には順番があります。まずはプロセスの順番を確認していきます。
- 目的と目標を設定する
- 市場分析をする
- ターゲットを設定する
- 自社のポジションを決める
- 商品コンセプトを決める
- マーケティングミックス(4P)を考える
- プロモーション戦略を立てる
- 顧客育成をする
これが基本的な商品企画プロセスの進め方になります。それでは、順を追って説明していきます。
ちなみに、商品企画全体の仕事内容が知りたい場合は、下記の記事から読み進めていくことをおすすめします。
目的と目標を設定する
商品企画においていきなり商品を作ることはまず行いません。商品企画の目的は主に三つに分けられます。
- 主力商品(売れる商品)
- 戦略商品(売りたい商品)
- 補完商品(売りたい商品を目立たせる商品)
この中から、今回の商品はどのような属性で作るのかを検討します。例えば主力商品であれば、既存で売れてる商品のリニューアルが該当します。戦略商品であれば、新ブランドの新カテゴリを主に企画し、補完商品であれば、主に戦略商品の色や香りなどのバリエーションを増やす形になります。
目的が決まったら、次は目標を設定します。目標はステークスホルダー(利害関係者)への合意形成および、販売数や売上などのKPIを見える化するために行います。
例えば目標が売上1000万円だとしたらどうでしょうか。
単価1000円の物を一万個販売すると達成できますよね?
次に、一万個を販売するための販促は?生産ラインは?納期は?と徐々に細かくすることで、計画に落としこまれ、実行計画が作られていきます。
このように、実行計画を立てていくためにも、目的と目標を明確にしておく必要があるのです。
さらに詳しく目的・目標設定の方法を知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
市場分析をする
目的・目標を設定したら、次は市場分析を行います。市場分析を行うことで自社のポジショニング、強み弱みなどを分析し、失敗しない商品企画のための情報を集めます。
実際には次のような分析を行います。
- 外部環境分析
- 自社商品分析
- 競合分析
- トレンド調査
外部環境分析
まず外部環境分析ですが、主なものとして「PEST分析」「ファイブフォース分析」を行います。
PSET分析は、政治、経済、社会、技術の切り口で外部環境を分析する手法です。この分析を行うことで、未来の良な中の流れを読みます。
ファイブフォース分析は売り手、買い手、競争企業間、新規参入者、代替品の5つに分けて分析をします。これらの要因はモノの価値に影響が大きく、周りの強さが強ければ強いほど収益性が無いことを意味します。
自社商品分析
自社の商品を分析する方法としては「SWOT分析」「TOWS分析」を行います。
SWOT分析は、強み、弱み、機会、脅威に分けて自社や自社商品を分析する手法です。強みを活かした商品作りや、弱みを克服する商品作りなどの方向性を見出していきます。
TOWS分析はSWOT分析で出した結果に対して、具体的な施策を考える手法です。それぞれSO分析、ST分析、WO分析、WT分析を行い、商品の戦略を立てていきます。
競合分析
競合分析を行うときは主に「3C」分析を行います。
3C分析とは、市場・顧客、競合、自社の3つに分けて、市場規模や市場の成長性、ニーズ、顧客の購買プロセスといった観点で分析する手法です。
この3Cを行うことで、購買に対する意思決定や障害などが把握できるようになります。
トレンド調査
世の中の動きのトレンドを知るために、トレンド調査を行います。
GoogleトレンドやYahooリアルタイム検索などを利用し、世の中のトレンドを見える化することで、今後の広告の方向性であったり、どこの地域で展開するかなどを決めていきます。
このように、市場調査を行うことで商品企画・マーケティングに関する問題を浮き彫りにしていきます。
より詳しい市場調査については下記の記事をご確認ください。
ターゲットの決定
市場調査の後はターゲットを決めていきます。購買力のあるターゲットを見つけることが非常に重要になってきます。購買力が無い所にターゲットを設定したところで、売上に繋がることは無いからです。実際の流れは次の通りです。
- 情報を取得する
- 情報を分析する
- セグメンテーションを行う
- ペルソナを決定する(ターゲットを絞り込む)
情報を取得するときは、二次情報から情報を取得していきます。二次情報とはネットや統計情報に掲載されている加工されたデータのことです。
情報が足りなければ一次情報を取得するようにします。一次情報とはアンケートやインタビューなどターゲットの直接の声のことです。
それらの情報を取得してから分析を始めます。分析にはヒストグラムや分布といった方法を活用してできるだけ客観的に見れるデータにしていきます。
次にセグメンテーション(分類分け)を行います。セグメンテーションには、デモグラフィック、サイコグラフィックといった分け方をするのが一般的です。
最終的にはペルソナまで落とし込みます。ペルソナ(仮想顧客)を作ることで、メンバー全員の意思統一が図れるほか、アイデアの軸が同じになるため、企画にブレが無くなります。
その他、ソーシャルリスニングなどの調査を行い、よりペルソナを具体化していくこともやります。ペルソナはリアリティがあればあるほど良いからです。
このように、ターゲットをペルソナまで落とし込む作業がターゲットの決定の要所になります。
自社のポジションを決める
次に自社のポジションを明確化します。ポジションを決めておかないと、商品コンセプトがブレてしまいよくわからない商品になるからです。ポジションは次のように決めていきます。
- 顧客の絞り込み
- STP分析
顧客の絞り込みを行うことで効率的な商品企画ができます。顧客が広ければ広いほど、商品は角がとれてしまい、とがった商品になりません。
既に有名なブランドであればそれでも問題ないかもしれませんが、今からブランドを作る段階においては可能な限り顧客を絞り込んだ方が良い結果がでます。
絞り込み方法には、一点集中型、選択型、フルカバー、顧客特化、市場特化と5種類の絞り込み方がありますが、体力が無い会社であれば一点集中型のみ考えるようにしましょう。
次にSTP分析を行います。STP分析は差別化を行うことです。自社と他社との違いを明確にすることで、差別化を図り、食い合わないようにし、消耗戦を避ける意味もあります。
この段階では、セグメントとターゲットは決定していますので、あとは自社のポジションを決めていく作業に入ります。
ポジションの最終アウトプットはSTP分析結果です。自社のポジションを明確にすることで、商品企画においても迷いのない企画ができるのです。
商品コンセプトを決める
必要な情報が集まった所で、商品コンセプトの企画に入ります。商品コンセプトは商品を構成する3要素で考えていきます。次のように考えていきます。
- 誰に
- どのような使用・購入シーン
- どのような便益をもたらすのか
商品コンセプトとは機能ではありません。あくまで顧客ベネフィットを主体とした概念です。顧客の便益性を考えた上で商品の機能を決めていくというのが全体の流れとなります。
「快適に過ごしたい」といった顧客ニーズを満たすモノが商品コンセプトです。
快適に過ごすためには、香りをこうしようだとか、色は青の方がいいよねといった機能を考えていきます。このような機能のことを商品スペックまたは、商品の機能性といいます。
また、便益性は二つに分ける事ができます。
それは「利便性」と「有益性」です。
利便性は利用する人にとって手軽に手に入るようにする入手性や、形状などが該当します。
有益性は実際にどのような効果をもたらすかが該当します。
また、ネーミングも商品コンセプトには重要な役割を果たします。企画している対象が商品ネーミングやブランドネーミングなのかも把握する必要があります。
このように、商品コンセプト段階では、商品がもたらすベネフィット、ネーミングを決めていきます。
詳しくは下記の記事をご確認下さい。
マーケティングミックス(4P)を考える
次に実際の商品を考えていきます。商品を考える時、4Pで考えることで市場や販促を網羅することができます。4Pとは次の通りです。
- Product(商品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(販促)
Productは、商品コンセプトを元に具体的な製品に落とし込みます。主にコンセプトを具体化する仕事ですので商品開発と呼ばれています。
Priceは、商品の価格帯を設計していきます。価格は直接的に消費者心理に影響します。この場合、価格受容性調査を行ったり、他社競合の価格帯を調べて価格を調整します。他社に打ち勝つためにわざと低価格で販売をすることもあり得ます。顧客にとっての丁度よい値ごろ感を付けるのがポイントです。
Placeは、ターゲットに届ける方法を設計します。店舗で購入するのか、通販で購入するのか、それとも直接販売するのかなど、ユーザーへ届ける方法を模索していきます。ターゲットが一番手に取りやすい方法を選択するのがベストです。
Promotionは、商品を販売するための実際の施策のことです。つまりは売り方を考えます。キャンペーン企画や、ポイントバックなど、ユーザーが買いやすくするための施策を計画していきます。プロモーションは直接的に売上に直結する部分ですので、慎重に検討していきます。
このように、最終的に4Pに落とし込むことで、製品から販促まで見渡すことができ、どうやって商品を売っていくのかが見える化できます。
より詳しい情報は下記の記事をご参照ください。
プロモーション戦略を立てる
商品を作るだけではなく、商品を知ってもらうための企画も大切です。商品企画におけるプロモーション戦略は主に三つの戦略を考えます。
- オウンドメディア
- 広報
- 広告宣伝
オウンドメディアは、自社で管理運営できるメディアです。情報を自ら発信できるため、ブランディングに必要不可欠なメディアです。ただし、いくら情報を載せたところで、見てくれなければ意味がありません。見てくれるコンテンツを作ることが大切です。
広報は、色々な意味がありますが、商品企画においてはメディアに商品を取り上げてもらえる方法を考えていきます。掲載されるかどうかはメディアの裁量になってしまいますが、掲載されたときの信頼性は格段に上がります。また、費用も掛からないメディアのため、非常にコストパフォーマンスが良いと言えます。
広告宣伝は、広告費を払うことでメディアに掲載してもらう情報のことです。お金を払っている分、情報は自由に決められ、企業の主張をそのまま掲載することができます。費用が莫大にかかりますが、マスメディアを使った広告は商品を知ってもらうのに効果は抜群です。
これらのメディアはどれか一つではなく、複数のメディアを使ってより効率的に商品を知ってもらうことが大切です。例えばテレビCMと同時にリスティング広告を出稿することで、クリック率は上昇するでしょうし、広報のメディアが出るタイミングでテレビCMを流すなど、メディアミックスの考え方が必要になります。
商品は作っても知ってもらわなければ意味がありません。商品企画はプロモーション戦略まで考えれて一人前と言えるでしょう。
より詳しい情報は次の記事でご確認ください。
顧客育成をする
最後は顧客育成です。これはマーケティングの領域かもしれませんが、商品企画の上のステップとして覚えて置いて損はありません。
顧客育成をすることは、将来の企業の資産になります。新規顧客を捕まえるよりも、既存顧客に購入してもらう方が、トータルコストが安くなるからです。
また、ロイヤルカスタマーに育成できれば、ブランドとの信頼関係が芽生えます。信頼関係が築けると、顧客の友人に商品を勧めていただいたりと、コスト以上のメリットを見込むことができます。
この顧客育成をブランドを通じて出来るようになれば、商品企画からブランドマネージャーへの道も開けてきます。
顧客育成はマーケターの仕事ではありますが、一度目を通すことをおすすめします。
まとめのまとめ
商品企画プロセスの進め方は大体ご理解いただけたでしょうか。商品企画は調査から企画、販売方法まで広い知識が必要です。
こらから商品企画を目指している人には、非常に難しい内容となっていますが、一つ一つステップアップしていただければと思います。
商品企画は、
- 調査をする
- 仮説を立てる
- 問題を発見する
- 問題解決の商品を企画する
- 商品の販売方法を検討する
- 商品の見せ方を検討する
- 顧客から意見を聞く
この流れをひたすら回す仕事です。あくまでこのプロセスは一例です。PDCAを回しながら、自分いあった企画方法を模索していってください。
商品企画の全体を知りたい方はこちら!
以上、商品企画プロセスの戦略的な進め方まとめでした。