商品企画戦略におけるポジショニング決定プロセスと進め方を解説

マーケティング

ポジショニングは商品企画を進める中でとても重要な要素です。というのも、ポジショニングが明確なものであればあるほどブランディングがしっかりとするからです。今回は、ポジショニングを決定するまでのプロセスをどのように進めるかを解説します。

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まずは自社の強みと弱みを知る

自社の強み弱みを知らないでポジショニングはできません。もしくは、今は強みが無くてもこの部分を強くするといった明確な意思が必要です。

強み弱みを把握することで次のようなメリットがあります。

  • 自社のリソース配分が最適化される
  • 強い所を伸ばすか弱い所を補強するか戦略が明確になる
  • 客観的な視点を手に入れることができる
  • 合理性の確認になる

自社の強み弱みというのは、一見商品に関係なさそうな気もしますが、商品は商品だけで売れるわけではありません。

組織、文化、広告宣伝、流通など様々な要因に起因して商品は認知されていくからです。いくら良い商品を作ったとしても、宣伝が下手であればまず売れることは無いでしょう。

また、宣伝が下手でも流通に対してある程度権限があるのであれば、複数の店頭などに商品を陳列してもらうことができるため、宣伝せずに売れる方法が確立できるかもしれません。

このように、強み弱みを知ることで、どのように商品を作ったり売り出したりするかを客観的に考えることができるわけです。

この強み弱みを知るためのフレームワークとして有名なのが「SWOT」分析です。

SWOT分析

SWOT分析とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字を取ったものです。

例えば次のような事が上げられます。

Strength(強み)

  • 商品開発力
  • 自社工場による柔軟な対応
  • 販売員の専門的知識の保有

Weakness(弱み)

  • 消費者のニーズが直接聞けない(代理店制度)
  • 商品開発までのリードタイムが長い
  • 広告宣伝が自社でできない

Opportunity(機会)

  • 競合Aが市場から撤退
  • ○○商品がSNSで大人気
  • 60%を超えるリピート率

Threat(脅威)

  • 競合Bが市場へ参入
  • 流通からの商品サイクル短期化要望
  • ユーザーの低価格化志向

このように、SWOTをそれぞれ書きだしていきます。商品だけにこだわらず、自社を取り巻く環境であったり、競合なんかも視野に入れて分析を行います。

TOWS分析

TOWS分析はクロスSWOTとも言われ、SWOT分析から出てきた分析結果を再度組み合わせで分析していきます。

TOWS分析を行うことで分かることは次の通りです。

SxO分析(強み最大化):積極的展開

市場機会から自社の強みをどのように活かすかを検討する分析方法です。実はこれO→Sの考え方とS→Oの考え方があります。

O→Sの考え方は、機会の中に自社の強みが無いかを見る考え方で、市場重視発想的なアプローチとなります。市場を重視しているため商品にぶれがない事が特徴です。

一方、S→Oの考え方はプロダクトアウト的な発想です。自社の強みから機会を見つける方法であり、非常に優れた商品であれば独占を作ることができます。

しかし、特許や新技術などが無い会社においては、O→Sの展開の方が考え易く、ブレも無いことから成功率は高くなります。

SxT分析(脅威に対処):差別化戦略

S→T分析は、差別化戦略とも言われ、脅威に対応できるような強みがあるのかを検証していくプロセスです。どうしても差別化できない場合は、その商品企画は成功する見込みが少ないため、別の企画を考えた方が良いでしょう。

差別化ポイントの切り口を変えるなどをして、もう一度検討する必要があります。例えば、商品機能が差別化できないのであれば、情緒的な部分をクローズアップしたり、デザイン性を重視したりと別切り口で考えます。

WxO分析(弱点を補完):補完商品の販売

機会があるけど自社にとっては弱みといった場合、弱みを克服する方針ではなく、自社の強みのある商品をより引き立てるための商品を企画したりします。

いわゆる補完商品の位置づけで、売りたい商品を目立たせるためのラインナップを組んだりします。こちらは売ることが目的ではありませんので、補完商品的な発想で考えます。

WxT分析(弱みを最小化):終売

弱みと脅威が揃っている場合、どうしても太刀打ちできません。この場合は無理せず、同リソースを別の商品に向けるなど、撤退の判断が必要になります。

ここで戦ったとしてもジリ貧が見えているので、弱みを最小化する発想で終売も視野にいれたスケジュールを企画していきます。

ライバル分析

SWOT分析は自社だけではなく、他社競合との比較にも使えます。自社にとっての強みが他社にとっての弱みであれば、最大のチャンスがあるわけです。

逆に、自社の弱みが他社の強みである場合、競合他社と同じカテゴリの商品を出しても太刀打ちができないため、無理に商品を企画する必要はありません。

勝てるべくして勝つための分析手法がSWOT分析なのです。

ポジショニングを決める

自社の強み弱みが分かったら、次は自社のポジショニングを決めていきます。つまり、顧客の絞り込みと自社のポジションを確定し、市場における立ち位置を決めていきます。

顧客の絞り込み

顧客の絞り込みについては、次の図のように顧客と市場のマトリクスで考えていく方法が有効です。

このように、顧客を絞り込むことで方向性がぶれないばかりか、市場規模も把握しやすくする効果もあります。

それでは、それぞれの戦略を細かく見ていきます。

一点集中型

最もターゲティングがしやすく、顧客の顔が分かりやすいので確実に顧客を獲得していくのに向いています。ただし、設定した市場が小さすぎると規模も小さくなるため、事業可能性と一緒に考えていく必要があります。

例えば、顧客:75歳の女性×市場:料理教室なんて設定をしてしまうと、どうしても市場規模が小さいためビジネスにならない可能性もあります。

逆に60歳~75歳と設定してしまうと市場が広がりすぎてニーズの特定が曖昧になります。広すぎず狭すぎずの丁度良い切り方を検討していきます。

選択型

市場可能性が高いもの順に選択的に獲得していく方法です。要は一点集中を連続的に行い、選択的に広げていく方法なのですが、市場可能性が高い所ばかり狙っていくと、どうしてもブランドの確立が難しくなっていきます。

ブランド確立のために戦略的に市場可能性の弱い所も広げいく方が、将来的なブランディングにおいては有効です。

フルカバー

新しいカテゴリの商品などを作った場合、一気に市場を開拓したい場合があります。競合が参入しにくくするために、顧客と市場を一度に広げる手法です。

もちろんですが、それなりな費用が掛かります。メジャーブランドが新しいカテゴリを市場に出す場合には使えますが、まだメジャーブランドではない場合、予算的にも難しい戦略です。

ブランド認知度が低いうちは絞り込んだ方が良いでしょう。

顧客特化

例えば30代~40代の男性といった属性に対して一気に拡散する絞り込み方法です。その顧客属性に認知されやすいブランドを構築するために使います。

その顧客が普段利用している施設やメディアなどに拡散していき、その属性の顧客を獲得していきます。

ライフスタイルと共に進化していくようなライフスタイルブランドを構築する場合には有効に機能します。

市場特化

例えばスポーツブランド=アジダスみたいな年齢に関係なく、スポーツに特化したブランドを構築する際に使う戦略です。

スポーツブランドとして、低価格から高価格まで様々なラインナップを揃えて、一気に市場を獲得していきます。もちろん、商品も数多く揃える必要があり商品計画もしっかりと立てておく必要があります。

 

以上が顧客の絞り込みになります。絞り込みができたら次はポジショニングを決めていきます。

STP分析

STP戦略とはSegmentation(市場細分化)、Targeting(ターゲット層の抽出)、Positioning(ポジショニング)に分解する分析手法です。

実は、顧客の絞り込みが出来ている時点で、SとTはほぼ確定してしまいます。市場細分化は顧客と市場のマトリクス、ターゲット層はその中のどこを選択するかです。

前段でSWOT分析を行いましたが、まさにSWOT分析で出た結果を元にターゲティングの選択をしていきます。

自社の勝てる場所がスポーツなのに、スポーツとはちょっと遠い「30代子育て主婦」なんてセグメントを選んでも全く意味が無いのです。

それでは、最後のポジションは何か見ていきましょう。

競合との位置関係を図る

STP分析のポジショニングは、差別化とも言われており、他社と自社のポジションを明確にすることができます。

例えば他社が「高価格帯」の提供価値をポジショニングしているのであれば、自社は「圧倒的な低価格」を打ち出すように、同軸で戦うよりも空白地帯をポジションする方が差別化できるため、顧客には認識されやすくなります。

ようは他社との違いを明確にすることがポジショニングというわけです。

継続性を検証する

さらに、その商品・サービスが継続的に展開できるものかも検証する必要があります。圧倒的な低価格とポジションを決めたにも関わらず、商品原価コストが高いままでは継続して戦うことはできません。

継続性はどのような商品においても必要となります。継続ができないものはブランディングができないからです。

ユーザーベネフィットを検証する

最後にユーザーベネフィットを満たしているものかどうかを判断します。先ほどの例題で出した「子育て主婦」がターゲットの場合、どのような事がベネフィットになるでしょうか。

自社商品が化粧品の場合はこんな感じです。

  • ターゲット:子育て主婦
  • 商品特長:すべてで基礎からケアまでできるオールインワン
  • ベネフィット:一つで全てができるためコスパがいい

ベネフィットと商品特長は別物です。その機能がある事によって、どんな気持ちが満たされるのかがベネフィットになります。

このベネフィットを継続的に満たすことができるブランドのポジションになるのです。ようは顧客(ターゲット)との約束事が守れないようではポジションになりえません。

これでSTP分析が完了です。

自社のポジショニング決定までの進め方まとめ

自社ポジションを決めるための進め方はご理解いただけましたでしょうか。それでは簡単にまとめていきたいと思います。

  1. 自社の強み弱みを知る(SWOT分析)
  2. ターゲットを決める(顧客の絞り込み)
  3. 自社のポジショニングを決める(STP分析)

つまり、

「自社を知る」

「顧客を知る」

「どの領域で戦うか決める」

といったプロセスが商品企画にとっては必要不可欠なのです。

いきなり商品を企画しろと言われると困るけど、このようにプロセスを経ることで、目的が明確になり方向性が見えてきます。

以上、商品企画におけるポジショニングについてでした。

 

なお、商品企画プロセスについては「まとめ」があります。そちらで商品企画プロセスをほぼ網羅することができますので、合わせてご確認ください。