商品企画におけるコンセプト立案は、まさに商品企画ならではの仕事です。商品の根幹を作り上げる仕事です。
この記事では、商品コンセプトを作るための進め方、ベネフィットの作り方をご紹介します。最後にはネーミングにも触れていますので、最後までお読みいただければと思います。
商品コンセプトとは
コンセプトとは訳すと「概念」という意味になりますが、商品企画におけるコンセプトは次の三つで構成されています。
- 誰に
- どのような使用・購入シーン
- どのような便益をもたらすのか
つまり、商品企画におけるコンセプトとは、「誰がその商品を、どのように使い、どのような気持ちになるのか」を表したものです。
それでは、スタバのコンセプトを例題として見てみます。
- 誰に:若者が
- どのような使用シーン:仕事から家に向かう途中に
- どのような購入シーン:定員とのコミュニケーションを楽しみながら
- どのような便益をもたらすか:おしゃれで落ち着きのある空間でゆっくりする
多分こんな感じです。ザ・サードプレイスという空間を売りにしているのは有名です。
このように、誰がどんなシーンでどう感じるかをまとめて「商品コンセプト」と言っているわけです。
スタバで言うと「サードプレイス」だけがクローズアップされてコンセプトなんて言われていますが、この三要素が無いと商品コンセプトとしては成り立ちませんのでご注意を。
同じモノでもコンセプトが違うと別商品にできる
商品コンセプトの項目でも分かる通り、商品コンセプトは機能ではありません。あくまでターゲットに対してどのようなベネフィットをもたらすかを定義したものです。
つまり、モノが同じでもコンセプトが違えば別物が出来るということです。
例題としてコニシボンドが発売している「裁ほう上手」をご紹介します。
裁ほう上手は元々、なんでも接着できるボンドとして売り出されました。紙、布、木、鉄、本当にオールマイティな商品です。
その時のコンセプトはたぶんこんな感じでしょう。
- 誰に:あらゆる人が
- どのような使用シーン:何かを接着したいと思った時に
- どのような便益をもたらすか:どんなものでもすぐにくっ付けることができる
これだけ見ると非常にすばらしい商品なのですが、実際に売れ行きはぱっとしませんでした。ターゲットを誰にでもとしたことで、コンセプトが曖昧になってしまったのです。
そこでコニシは新しい商品コンセプトで販売することにしました。
- 誰に:主婦が
- どのような使用シーン:手芸で針が使えない時に
- どのような便益をもたらすか:気軽に布を接着できる針・糸いらずの布用接着剤
ミシンなんかが出来ないときに重宝しますよね。実際にコンセプトを変えてパッケージを手芸よりにしたところ大ヒットをしています。
もちろん、中身は同じです。まったく変えていません。
製品は同じでもコンセプトを変えることでターゲットが的確になり、よりユーザーのニーズを捉えた表現ができた好例です。
このように、商品コンセプトはまさに企画の醍醐味とも言える面白い部分です。
ベネフィット(便益性)の創出
コンセプトの三要素の中で、実際に一番大切なのはベネフィット(便益性)です。この便益性を無視した商品づくりはまず成功しないと思っても過言ではありません。
便益性とは次の二つで構成されています。
- 利便性
- 有益性
利便性は、利用する人にとって都合がよいことを表します。つまり手軽に手に入り、使いやすいなどといったことを意味します。
有益性は、その商品を使うことで実際にどのような効果がもたらされるかが核となります。
つまり、いくら有益性が高くても、手に入りづらい状況であったら、ユーザーは購入しませんし、逆に利便性だけ高くても、効果が実感できなければ同じく購入しないということです。
この二つを合わせて便益性と言います。
両社が揃って初めて商品となるため、機能だけにこだわってやたら高い商品なんかは、利便性が高いとは言えません。
逆に安かろう悪かろうであっても、商品として成立しないのです。
もう少し例題として、電気自動車の日産リーフの便益性を考えて見ます。
先の商品コンセプトのようにリーフのコンセプトを出してみましょう。
- 誰に:環境に配慮したドライバーが
- どのような使用シーン:自宅で手軽に充電できる
- どのような便益をもたらすか:地球に配慮した先進的で経済的なエコカー
このように、便益性は燃費が経済的、環境貢献への満足感、先進的なものを使う喜びが該当します。ターゲットが最終的にどのような気持ちになるかが大切です。
ちなみに、便益性には機能的価値と情緒的価値と二つに分けることができます。
リーフの例題で言うと、機能的価値は「経済的」、そして情緒的価値は「地球に配慮した先進的なエコカー」です。
ベネフィット(便益性)は、差別化における大切な要素です。
そして、ここが企画職として非常に楽しい所でもあるわけです。
商品ネーミング
そして、商品コンセプトを企画する中で最もユーザーに近い所にあるのがネーミングです。ネーミングはシンプルであり、ユーザーに一瞬でどのような商品か伝える役割があります。
ちなみに、商品ネーミングとブランドネーミングは全く別物です。ブランド名の場合は、そのブランドを差別化できるネーミングにする必要があります。
一方、商品名の場合は、ターゲットにとっての分かりやすさを優先します。この違いをもう少し詳しく見ていきます。
ブランドネーミングの場合
ブランドの場合、他のブランドと比べて違いが分からなければ意味がありません。例えば、洋服のブランドなんかは、ユニクロであったり、GAPであったり、そのままでは意味すら分からないものがブランド名になっています。
これは、グローバルアパレルなんて言うコモンネームに近いものを付けると、服屋さんというのは分かりますが、差別化しにくいのは一目瞭然です。
ブランドネーミングにおけるチェックリストは次の通りです。
- 固有名詞になっているか
- 差別化できるネーミングになっているか
- ブランドコンセプトとかけ離れたものになっていないか
- 覚えやすいか
音から連想したり、ヴィジョンから発想するネーミングなどもあります。どんなものでも、やはりブランドのネーミングは固有名詞を作ることが多いのは確かです。
商品ネーミングの場合
商品ネーミングの場合は、より分かりやすさが重視されます。例えば皆さんがよく使うGoogleマップなんて、サービス名はただの「マップ」なのです。
つまり、ブランド名+サービス名で構成されているのがGoogleの商品群なのです。他にはフリースなんていうのも、ユニクロのフリースと言うとイメージがぱっと湧きますよね。
実際に、第28回読者が選ぶネーミング大賞においても、そのような傾向が見られます。
日刊工業新聞社は「第28回読者が選ぶネーミング大賞」の大賞に、明治安田生命保険の手軽に加入できる保険商品「かんたん保険シリーズ ライト!By明治安田生命」を選ぶなど、優れたネーミングの16商品・サービスを決めた。ビジネス部門の1位はキャニコムの荒れ地向けの草刈り機「荒野の用心棒ジョージ」、生活部門の1位は山陰酸素工業のガス学習施設「さんそ学習館 ケイオス」となった。商品やサービスの機能や特徴が理解できる“わかりやすい”ネーミングに票が集まった。
このように、商品名についてはシンプルなのが一番ユーザーにとって分かりやすいのです。
こちらもチェックリストとしては次の通りです。
- ユーザーにベネフィットが分かるのか
- 機能とかけ離れたネーミングになっていないか
- 親しみがあるのか
ネーミング一つで商品の売れ行きも変わってきますので、とても重要な要素なのです。
ネーミングが決まったら必ず商標を確認する
実際のネーミングにおいては、音や発音、見た目も重要視されますが、もう一つ、商標も忘れてはならない要素です。
すごいぴったしの名前を思いついても、どこか他社に商標を取られていては、その名前は使えません。使うと権利違反になり、最悪民事裁判にて差し止められます。
何個か良いネーミングが決まったら、すべて商標の確認をすることをおすすめします。弁理士に頼むとお金がかかりますが、インターネットで簡易的に調べると無料でできますので、絶対にチェックするようにしましょう。
今後、国際的な流れを考えているようであれば、外国の商標も確認するようにしてください。
怠ると法律的な問題になりますので、後々大変になります。
商品コンセプトの進め方まとめ
商品コンセプトの作り方・進め方の大体のイメージは掴めましたでしょうか。簡単な流れは次の通りです。
- 商品コンセプトを立てる
- ターゲットのベネフィットが合理的か検証する
- ネーミングを考える
一般的なコンセプトと商品コンセプトの違いは意外と知らない人も多いですので、これを機に確実にしておきたいものです。
何度も言いますが、商品コンセプトのキモはターゲットのベネフィットです。どんな良い商品であれ、便益性が無いと商品としての魅力はゼロです。
また、ネーミングはユーザーの中で記憶に残りやすいため、特に気を付けていきたい所です。商品コンセプトまでが出来れば、あとは売り方を考えていくだけです。
なお、商品企画プロセスについては「まとめ」があります。そちらで商品企画プロセスをほぼ網羅することができますので、合わせてご確認ください。