T-ARAのグループ名変更騒動によるアイドルグループと商標の関係について考察する

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T-ARAの元所属事務所であるMBKエンターテインメントの商標出願により、 T-ARAという韓国アイドルグループの名称が変わるかもしれません。 そんなアイドルグループと商標の関係について考察してみました。

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「T-ARA」という商標がMBKエンターテインメントによって出願される

つい最近(2018年1月4日)にMBKエンターテインメントとの”満了による契約終了”という形で、実質解雇になったT-ARA(ティアラ)ですが、 2018年1月8日付けで、MBKエンターテインメントは「T-ARA」という商標を出願したようです。

本人たちはグループとしては解散しないとのことですが、このニュースを見ると、事務所側としては、完全に潰しにかかっていますよね。

”奴隷契約”とも言われている韓国芸能界で、どんな働き方をしていたのか分かりませんが、 金銭的なものか、それともプライベートで揉めた結果だとも言えます。

T-ARAとしては「Love Me!」という曲が好きだったのですが、今後、個人がライブ活動とかをする場合、 どんなアーティスト名で来るんでしょうね?

T-ARAというグループはかなり脱退&加入を繰り返し、経歴を見るだけでも曰くつきのグループです。

最終的に、事務所との決別という形で実質解散をしたわけですが、ふと疑問に感じたことがあります。

あれだけの商品価値のあるものに対して、今まで商標を出願していなかったのかという疑問です。

そこで、アイドルグループの商標を調べてみることにしました。

日本の各アイドルグループと商標出願状況

ということで、早速主要グループの出願状況を特許情報プラットフォーム「J-PLAT PAT」により検索してみます。

出願済み(初出願年)

  • AKB48(株式会社AKS@2006年)
  • ももいろクローバーZ(株式会社スターダストプロモーション@2012年)
  • 少女時代(株式会社エスエム・エンタテインメント・ジャパン@2008年)
  • 仮面女子(株式会社クリーブラッツ@2014年)
  • E-Girls(株式会社LDH@2014年)

出願無し

  • 乃木坂46
  • モーニング娘。
  • でんぱ組.inc
  • 私立恵比寿中学
  • 全力少女R

結構、登録していないところも多いですね。

特にデビュー間もなく売り出し中のアイドルについては、出願していないよう感じです。

では、何故このような傾向になるかを考えてみたいと思います。

アイドルグループが商標を取らない理由

ぱっと調べた限りでは、半分ぐらいは商標を取っていない様子でした。

取らない理由としては、次の通り考えられます。

売れるか分からないのに商標を取るコストが勿体無い

商標を取るだけでも、結構なコストがかかります。

といっても、芸能活動する上での分類だと、2、3分類ですむと思いますので、40~50万程度だとは思いますが、 それでも、コストとしてはやっぱり高く感じてしまいます。

それに、今後グッズなどの分野で、アパレルだったりとか、雑貨だったりとかに手を出すときは、 それ相応の分類まで広げなくてはならないため、100万単位でかかってくるとは思います。

事務所が売れるかわからないアイドルに対して、目に見えないコストをかけるでしょうか。

特に商標と言えば、前向きなコストではなくて、どちらかというと守る側のコストです。

ぶっちゃけ、売れなければ商標を取っててもまるで意味が無いのです。

このように、どこの事務所でも、アイドルの売り出し時期にあたっては、商標なんて取らないのが現実です。

先ほどの商標を出願しているグループとして記載した「ももいろクローバーZ」の例を見てみましょう。

ももいろクローバーZはデビューが2008年なのですが、商標の出願日においては2012年です。

つまり、4年間もブランクがあったということです。

この間に、ももいろクローバーZの商品価値を見定めていたのだと思います。

売れなくて、商品価値が無いと思われたらそのまま下火で解散ってことですよね。

厳しい世界なのは相変わらずです。

先使用権のため商標を取らなくても問題ない

先使用権とは、自分が先にその名前を使っていたのだから、今後も使うのは当然の権利があるということです。

しかし、この先使用権とは「先に使用している」だけでは、権利として認められません。

その中に、「不正競争の目的がなかったこと」および「周知であること」も要求されるのです。

不正競争の目的とは、他人の信用に対してタダ乗りして、何かしら利益を図ろうとすることです。

少し難しいので、もう少し簡単に書くとこうなります。

「モーニング娘。」の商標が無かったため、「モーニング娘。」の商標を取り、モーニング娘。のグッズ販売に対して商標の権利を主張し利益を要求しようと考えた。

これは思いっきりアウトです。まさしく不正競争の目的になります。

あら、さきほど「モーニング娘。」の商標を取っても問題ないですよね?といったのは、完全に違反ですので、やらないでくださいね。

では、次の周知であることはどうでしょうか。

これも簡単に言えば、有名であるかどうかということです。

「モーニング娘。」レベルになると、全国区で有名な名前に該当しますから、後から「モーニング娘。」の商標を取ろうとしても、特許庁に拒絶されます。

逆に言えば、地下アイドルレベルだと、ぜんぜん後から商標が取れちゃいます。

今から売れそうなアイドルを見つけて、こっそりと取っておくというのもできちゃうのです!!!

つまり、商標出願者に不正競争の目的が無く、さらにその名前が有名じゃなかった場合は、商標を取ることができます。

 

このように、アイドルグループの名前は、売れない時はコストの面で取得するメリットが無く、 逆に売れてくると先使用権によって守られるので、商標を取る意味がないということですね。

T-ARAの元事務所MBKエンターテインメントは商標が登録できるのか

結論から言えば、可能だと思います。

私は弁理士でもないので、あくまで憶測ではありますが、T-ARAについてはMBKエンターテインメントの発案であり、 “使用”実績もあることから、特許庁は登録を許可すると見ています。

そして、もう一つの論点。

なぜMBKエンターテインメントは今さら商標を出願したのかについてです。

それは、MBKエンターテインメントの商標出願範囲を見てもらうと一目瞭然です。

商標出願範囲は以下の通りです。

この商標の指定商品はダウンロード可能な音楽、携帯電話の着信音、音楽公演が収録された電子メディア、歌手公演業、大衆音楽コンサート組織業、Tシャツや靴など各種ファッション製品、化粧品などで、商標権が登録されればT-ARAのメンバーはMBKの許可なくこれらの事業を行うことができなくなる。

これでは、ほとんどの芸能活動が出来なくなりますね。

メンバーは、今後T-ARAの名前を一切使わずに営業するしかありません。

プロフィールに事実であるT-ARAの元メンバーとは書けますが、アパレルなどにT-ARAと少しでも連想されるものを入れただけでアウトです。

この範囲、音楽だけじゃなく「T-シャツや靴などの各種ファッション製品」「化粧品」なども含まれているのが少し悪意を感じます。

T-ARAとして、芸能活動以外で「経済活動」すらも封じているため、メンバーは今後の仕事に色々と制限が出そうです。

韓国の法律は分かりませんが、日本においては、3ヶ月~半年で登録申請の許可が下りるため、 その間にメンバーは次の方向性を模索していく必要があるんじゃないでしょうか。

完全に潰しにかかっている事務所。

よほど、事務所と揉めたんでしょうね・・・。

アイドルグループにおいて商標は必要か

先使用権があるため、必要ないといえば必要ありませんが、まだ「有名」でないのであれば、取られちゃう可能性もあります。

コストがかかるのは百も承知ですが、このコストをもアイドルグループに提示してあげることで、モチベーションアップには繋がらないでしょうか。

芸能界ではない自分から見ると、せっかくブランディングしてデビューさせた商品の商標を取っていないことに驚きなのですが、 これが芸能界のスタンダードなのでしょうか。

アイドルグループにおいて、商標は必要ないのかもしれませんが、後々に揉める原因になるのであれば、 早い内に商標出願を行っていた方がいいのかもしれません。

最後に

T-ARAの騒動を受けて、まじめに商標関係について考察してみましたが、やっぱり大事な商標。

ブランドを守るため、メーカーであれば必ず取得しておいた方が良いと思います。

最後に、今回の騒動で色々と大変だと思いますが、個人的には応援していますので、がんばってくださいね!

細々と日本から応援しております。