商品企画の進め方について部分的には良く見るのですが、商品完成まで全体を通しての知りたいといった需要が見受けられました。
もちろん、業界や会社によって商品開発の手法は違うものの、概論的に商品企画の全体をイメージができるものを目指して書きたいと思います。今回はファーストステップとして、商品企画の目的・目標が何故必要なのかを解説し、最後は商品企画の目的・目標シートの完成までをお伝えしていきます。
商品企画とは
まず商品企画とは何でしょうか。似ている言葉で商品開発もありますが、似ているようで若干違います。商品企画とは商品周り全般を企画することであり、商品開発は実際の製品設計の事を指す場合が多いです。
それでは、詳しく見て見ましょう。
商品企画と商品開発の違い
先ほどもお伝えしたように、商品企画は商品の全体像を作る事です。例えば、こんな商品があったらいいなだとか、こんな人に使ってもらいたいなど「いつ」「どこで」「だれが」「なにを」「どのように」「どうやって」売るのかを決める仕事です。
このとき考えた商品概要のことを、コンセプトと言います。
一方、商品開発はそのコンセプトを元に具現化する仕事です。実際の成分や中身、スペックを決めて実際の製品にまで落とし込む仕事になります。
この時、商品企画で作ったコンセプトに合っているか、コストは問題ないか、決められた価格帯で売ることができるのかなど、試行錯誤し実際のプロダクトにしていきます。
つまり、商品企画は商品の全体像を決める仕事で、商品開発はその商品を具現化する仕事だということです。
- 商品企画:商品のコンセプトを決める仕事
- 商品開発:商品コンセプトを元に具体的に作る仕事
違いが分かった所で、早速、商品企画の手順を見ていきましょう。
商品企画の目的と目標を明確にする
まず最初にする仕事は「何故その商品を作るのか?」を明確にすることです。商品は何となくできるものではなく、しっかりと計画を練って作るからです。
目的と目標が無い商品企画は、たまには成功するかもしれませんが、ほとんどの場合失敗に終わり、1年で終売になることも良く聞きます。僕の関わった仕事でも、このフェーズを重要視していなかったために、残念ながら市場から存在を消したものもあります。
それでは、この目的と目標の決め方を見ていきましょう。
会社理念との一致させる
当たり前の話ですが、商品は会社の理念や戦略と一致しなくてはブランドがぶれてしまいます。例えばSONYなんかは「たわいのない夢を大切にすることから、革新が生まれる」を理念として掲げています。
この理念の元に、すべてのプロダクトを設計・開発しています。これがぶれるとSONYらしさが無くなり、結果、商品は売れなくなってしまうのです。
次に考えることは、社会貢献です。
商品で社会貢献ができるか確認する
あまり意識はしなくていいかもしれませんが、現在の商品企画のおいては、この社会貢献の視線はかなり重要なものとなっています。
ソーシャルグッドという言葉がささやかれるようになって久しいですが、この社会貢献の意識は、一般消費者にも根付いており、社会貢献を謳えないプロダクトは見向きもされなくなってきています。
まずはこの二つ、商品企画において理念の部分は外さないようにしましょう。続いて、実際の目的の決め方についてです。
商品企画の目的を決める
商品を企画する上で、どのような商品にするかの目的は主に次の3つがあります。それは「主力商品」「戦略商品」「補完商品」の3つの分け方です。
それでは、それぞれ見ていきたいと思います。
主力商品(売れる商品)
主力商品とは、主に売上の柱になる商品のことです。このタイプの商品はすでに販売されていて、リニューアルやバリエーションを増やすことで売上の増加を図ります。当然、コスト面においてもシビアに見られ、利益の追求を徹底的に行います。
戦略商品(売りたい商品)
戦略商品は、戦略上必要な商品のことです。例えば、他社と差別化を図るための商品であったり、コンセプトモデルと呼ばれる会社技術の粋を尽くした商品などが戦力商品に当ります。企業理念や企業戦略と深くリンクするタイプの商品になります。
補完商品(売りたい商品を目立たせる商品)
補完商品とは、戦略商品の販売を拡大するために開発する商品です。主力商品をお得に見せるために高額な商品を出したり、個別の顧客に向けた少し違うバリエーションを出したりする主力商品の補完のための商品群です。
このように、商品企画は、「会社の理念」「社会貢献」と合致していることが前提であり、どのようなタイプの商品を作るか目的を決めることから始まります。
つづいては、商品企画の目標を見ていきます。
商品企画の目標を決める
続いて目標の決め方です。目標を決めるのは「ステークスホルダー(利害関係者)に対して、共通意識を持ってもらう」ことと「どのぐらい売ればいいのかなどのKPIの目安を作る事」の2つが主な理由です。
この目標の合意形成ができていないと、後々何が悪かったのか良かったのかの判断ができませんので、仮でもかまいませんので、必ず目標は設定するようにしてください。
例えば売上が1000万円欲しいといった目標があるのであれば、1000円の商品を1万個売れば良いと逆算できます。それでは、1万個売るためにはどのような商品にすると良いのかなど、基準を元に考えることができます。
それでは、どのような目標設定があるのか見ていきたいと思います。
売上目標/利益目標
主に売上をベースに目標を立てるやり方です。新商品の年間売上目標は1億といった具合に目標を立てます。誰にでも分かりやすい指数となっておりますので、比較的使われやすい傾向があります。
また、売上目標だけではなく、利益目標も立てることでコストについても反映しやすく、生産であったり、原材料の調達面において分かりやすい指数の一つです。例えば次のような目標が考えられます。
- 売上目標:1億
- 利益目標:売上の30%
シェア目標
シェア目標とは、想定している市場において、何%のシェアを目指すかを目標にすることです。シェア率が目標になるので、市場動向および他社の売上情報は掴んでおく必要があります。また、一般的にはシェアをたくさん奪った方がその市場において強くなるのは当たり前で、ランチェスター戦略などにおいては、まずは約26%のシェアを取るように決めています。
シェア目標を立てることによって、自社と他社の市場優位性が分かり、ライバルを明確にできますので、比較的ベンチマークがしやすい利点があります。
- ターゲット市場のシャア率:40%
- ユーザーマインドへのシェア率:60%
社会目標
社会目標は、企画した商品の社会貢献度を目標にします。社会貢献度が高い商品ほど、社会に受け入れられやすくファンも増えていきます。企業の目的は利益の追求ですが、それ以上に社会貢献が求められています。※売上至上主義にならないためにも、社会貢献の目標は会った方が良いとされます。
実際の指標としては「つくる責任、つかう責任」の元、不良在庫率や廃棄率の改善などがあげられます。このような指標は結果的にコストに直結する項目ですので、立てておいて損はありません。
- 不良在庫率:3%
- 廃棄率:2%
- 資源の再利用率:10%
- 利益の一部を寄付:売上の1%
その他の目標
また、その他の指標としては、次のような指標も考えられます。
- コミュニケーション指標:認知率、商品理解率
- 流通指標:導入店舗数、店舗の棚割合い
- 行動指標:イベント参加率、会員数
このような目標を持つことが商品企画の第一歩となるのです。指標については、各社それぞれあると思いますので、自社にあったものを選ぶと良いでしょう。
ステークスホルダーを検討する
商品企画は自社だけでできるものではありません。様々な利害関係者によって商品は作られていくのです。一番分かりやすいのはプロジェクトメンバーでしょう。このメンバーの力なくしては商品は開発できないのです。その他の直接的な関りを持つ人は、原料などの仕入先であったり、直接販売するお客さんもそうでしょう。
また、間接的なメンバーとしては「国・地域」といったものから「株主」のように直接的ではないが影響力のある対象も検討しなければなりません。昨今では商品一つにしても、その商品が環境対応しているか、本当に必要な商品なのか厳しくチェックされるようになってきました。
これらの関係者から合意をもらうことが商品企画成功の秘訣となります。うまく巻き込めるように、利害関係者については理解しておくようにしましょう。
- ユーザー
- 株主
- 国、地域
- プロジェクトメンバー
- 仕入先
- 得意先
ここまでが商品企画の目的・目標となります。一旦シートを用意し、書き込んでみてください。
商品企画の目的・目標シートを書く
今までお話した内容をざっとシートにまとめてみます。シートにすることで、利害関係者と意識を共通することができ、目的もはっきりとするので、プロジェクトメンバーの合意を得やすくなります。
会社の戦略 | オンリーワン化粧品の開発によるユーザーごとのニーズに対応するサービス |
売上目標 | 年間で1億 |
シェア目標 | 26% |
社会的目標 | 大量生産大量消費ではなく、個人個人のニーズにあったスキンケアをカスタマイズすることによって、大量消費の文化を変える |
コミュニケーション目標 | 認知率20% |
流通目標 | 都内100店舗にカウンセラーを配置しお客様ごとにカスタマイズ |
行動目標 | 会員数年間で10万人 |
最後に
商品企画の目的・目標の必要性と具体的な出し方を書いていきました。意外と目的や目標を忘れることがありますので、一枚のシートにまとめておくことをおすすめします。
このシートはプロジェクトの曖昧さをできるだけ排除するために作るものです。曖昧なままほおっておくと、そのうち取り返しのつかないことになりかねません。まずはプロジェクトの合意形成のため、商品企画の目的・目標からスタートすることが大切なのです。
次回は自社を知ることを中心に展開していきますので、お楽しみください!
なお、商品企画プロセスについては「まとめ」があります。そちらで商品企画プロセスをほぼ網羅することができますので、合わせてご確認ください。