マーケティングの肝となるデータ活用。あなたは上手く活用できているでしょうか。今回は、サイコグラフィックとは何かを解説しながら、デモグラフィックとの違い、そして双方を生かしたマーケティングでの実例をご紹介したいと思います。辞書等ではサイコグラフィックは心理的要因とか思想的要因などと書かれていますが、ここでは化粧品の開発実例を元に解説していきます。
サイコグラフィックとデモグラフィックの違い
サイコグラフィック見るまえに、まずはデモグラフィックとは何かを見ていきたいと思います。以下のデータを見てください。
- 名前:田中ダメ子
- 年齢:43歳
- 性別:女
- 家族:夫、子供一人(男)
- 収入:200万円(パート)
上記のようなプロフィール的なのがデモグラフィックデータです。これは見て分かる通りMECEになります。MECEとは「重複なく、漏れなく」という意味で、このようにそれぞれの切り口が人口統計学的になっているものがデモグラフィックです。
このデモグラフィックは、世帯別、年齢別などで区切り、その属性の人は、このような傾向があるという仮説のもと分析するときに使われます。
例えば、化粧品を開発するときに、40代の女性、専業主婦、子供が1人という個人像(ペルソナ)を作り、この属性に当てはまる人の求めている化粧品はこれだと、 仮説を立て開発していく のです。
次に、サイコグラフィックデータを見てみましょう。
- 最近、肌荒れに悩んでいる
- 若いころより、化粧のりが悪くなったと考えている
- 経済的メリットよりも質を求める
これが、サイコグラフィックデータとなります。見た瞬間わかると思いますが、全然違いますよね。非常にあいまいな表現です。
冒頭で述べましたが、心理的な要因がサイコグラフィックなのです。
客観視できるデモグラフィックと違い、サイコグラフィックは本人の主観が全てです。他の人は全然気にしていないことでも、いつもより肌荒れがひどいと感じてしまい、外に出たくないなんてこと、あったりするのではないでしょうか。
実際に人が行動するときは、上記のような心理的要因がかなりのウェイトを占めていることは経験上おわかりのはずです。
この心理的要因のことをサイコグラフィック、分析してまとめたものをサイコグラフィックデータと言います。
サイコグラフィックは心理的要因を分析したもの
あくまでデモグラフィックは客観的に人口統計学的に仕分けただけにすぎません。「あなたは43歳女性で、夫と子供一人がいますよね」と言われても「はい、そうです。それが何か。」ぐらいの返答しかできないと思います。
それが、サイコグラフィックだとどうでしょう。
「あなたは最近肌荒れを感じていませんか。若いころと比べ、化粧のりが悪いなと実感していることでしょう。この化粧品を使うと、20代の肌が取り戻せます。」なんて言われると「その化粧品、紹介してください。」となるわけです。
やはり、行動させるにはサイコグラフィックが大切だと感じることでしょう。
ただし、このサイコグラフィックだけでは、 非常に広すぎてどこをターゲティングしていいのかわかりません。
だから次のようにデモグラフィックと合わせて使うのです。
デモグラフィックとサイコグラフィックを合わせてターゲティングに使う
先ほどのデータを合体してみましょう。よりプロフィールが鮮明になり、ターゲットが絞れてきたと思います。
- 名前:田中ダメ子
- 年齢:43歳
- 性別:女
- 家族:夫、子供一人(男)
- 収入:200万円(パート)
- 住所:東京都杉並区
- 備考:最近、肌荒れを実感しており、化粧のりが悪くなったと考えている。経済的メリットよりも質を求める。
さらにジオグラフィックというデータもあります。 これは、地域を元にしたデータのことです。
今回はあまり触れていませんでしたが、ジオグラフィックについてもとても大切な概念ですので、ついでに覚えておきましょう。
ここでは、プロフィールに住所というジオグラフィックデータを反映させています。
これでペルソナデータを作ることができました。実践ではもっと細かくするのですが、今回は単純なデータで考えてみたいと思います。
田中ダメ子さんが心理的に求めているものは、化粧のりが良くなって若い肌を取り戻すこと。上質なものに対して、お金をかけることによる心理的抵抗は薄い。
この欲求を化粧品に置き換えると、メイクものではありませんよね。肌年齢を若返らせる基礎化粧品、化粧水や保湿クリームです。これで商品の方向性は決まりました。
では、田中ダメ子さんのデモグラフィックデータにも目を向けます。43歳女性、子供は一人で学校の時間の間だけパートに出ている。パートの収入があるため、比較的使えるお金はある。
商品スペックも決まりそうです。使えるお金もあることから、経済的な訴求よりも、より上質のプレミアム感を押し出した方が心に響くのではないでしょうか。そこで出来た商品がこれです。
- 商品名:エクストラ スキンクリーム シワトールEX(仮)
- 価格:8,000円(税抜)
- シワを伸ばすレチノール(ビタミンA)を高配合した美容クリーム
毎晩夜寝る前にしっかりとお肌にしみこませて寝てください。
寝ている間に美容成分がお肌の角質層まで届き、翌朝の化粧のりが驚くほどスムーズに。
パッケージや容器などにも拘って、上質感を全面プッシュしていきます。
もちろん、このデモ&ジオ&サイコデータは商品開発だけではなく、販促などでも活用していきます。
同じく店舗も運営しているとして、その店舗から遠い所で販促しても意味がないですよね。 そういうときは、地域というジオグラフィックデータを取得し、その地域で潜在顧客が求めているサイコグラフィックデータでニーズを模索し展開していくのです。
レストランでも同じです。フレンチを手軽に食べたい欲求(サイコグラフィック)に対し、手軽にフレンチが楽しめるお店を出すことなんかは、ジオグラフィック(地域)と、デモグラフィック(属性)と、サイコグラフィック(フレンチが食べたい)の合体技です。
では、どのようにして私たちは、このサイコグラフィックのデータを取得することができるのでしょうか。
サイコグラフィックデータの取得方法
サイコグラフィックのデータは、基本的にはユーザー直接の声からしか拾うことはできません。
お客様アンケートやインタビュー。アンケート回答など、直接エンドユーザーとの関わり、コミュニケーションを図ることで、サイコグラフィックデータの精度は上がっていきます。
その他、近年のデータ取得方法として有効なのは、SNSを活用したユーザーアンケートじゃないでしょうか。上手くいけば母体数が多いアンケートを回収できます。それ専門の業者もありますので、活用するのもいいと思います。
お客様相談室などの部署を設けている会社などであれば、直接エンドユーザーと会話ができますので、そこでのデータを分析することで、ある程度サイコグラフィックのデータは蓄積できると思います。
そしてもう一つ、アナリティクスを活用した水面下でのデータ収集方法もあります。
これは、仮説のランディングページを作ったり、実際に販売している商品に対し、どのようにリーチしたかを分析します。
SNSからのお客さんだったり、自然検索からのお客さんだったりするので、それぞれの検索キーワードやリンク元データなどを総合的に分析します。
検索されるページを作ることが大変ですが、水面下で分析した方が、より潜在ニーズに合致したものが得られるのも事実です。
最後に、自分がコンテンツを作らなくても、ある程度把握できる方法としては、Googleサジェスト(候補)を使うという手もあります。
例えば「肌」と入力した時に「肌 たるみ」などの、サジェストが出てきたことないでしょうか。
これは、広く検索されているキーワードの一覧を、Googleが候補として出してくれる機能のことで、おおまかな市場特性などがわかります。もちろん、検索件数やウェブページの数なども参考値として分析するようにしましょう。
ただし、この方法はあくまで参考であり、確実なものではありません。
過度なSEO対策のため、その情報が確かかどうかがわからないからです。
結局は、お客様に直接聞くことと、コンテンツを作り、アナリティクスで潜在顧客を把握する。この二つをハイブリッドで運用するのが一番だと思います。
ちなみに、サジェストで把握する際には、Yahooのサジェスト機能も使うことをおすすめします。候補がGoogleよりも多く出やすい傾向があり、内容も若干違いますので、両方を比べることがベターです。
YahooのサジェストとGoogleのサジェストの違いは別記事にありますので、そちらもご確認いただければと思います。
サイコグラフィックデータの活用方法
繰り返しになりますが、サイコグラフィックデータはデモグラフィックと同時に使用することで、より制度が上がります。
今回は化粧品でしたが、実際問題、サイコグラフィックデータのみ活用し、すべての欲求を満たす商品開発なんて現実的じゃないと思います。より絞ったターゲットにベストなシナリオを展開するようにしていきましょう。
このように、商品開発、価格帯、販促、パブリシティ、キャッチコピー選定など、マーケティング活動の中において、必ずと言っていいほどサイコグラフィックデータは活用されます。
そして何より、ペルソナを作り、仮想のターゲットをイメージすることで、マーケティングコンセプトの具体性が増していきます。顧客をイメージすることがマーケティング的に非常に大切な要素であることは言うまでもありません。
そのためのデータとして、デモグラフィックおよびサイコグラフィックは重要なものなのです。
ペルソナの作り方としては、次の記事が参考になりますので、一読することをおすすめします。
サイコグラフィックデータはインサイトを見つけるのに必要
2018/2/19追記:
このサイコグラフィックデータというのは、インサイトを見つけるときに非常に役に立ちます。
インサイトとは簡単に言うと「気づき」です。
ウォンツやニーズというのは、すでに表面化している問題です。
実は、表面化している問題を解決したところで「感動」は生まれません。
そこにあるのは「満足」でしかないのです。
インサイトとはすなわち、表面化していない問題です。なのでユーザー自身も何が問題なのかわかっていない状態です。
これを探す手立てがサイコグラフィックにあるのです。
渋谷に住んでいる人という「デモグラフィック」を見てもインサイトは見つけられません。
仮に、美白になりたいといったニーズがあったとして、それは本当にインサイトなのでしょうか。
もしかしたら「美白」ではなく「友人に黒い」と言われたくないだけかもしれませんし、逆に「黒く」することで「健康的」と友人から言われたがために感動を覚えるかもしれません。
このように、その人がどこに感動を覚えるかを分析するときに、サイコグラフィックデータは必要なのです。
某S化粧品会社では、この「インサイト」を見つけるために、一人の顧客の声を徹底的に聞き出し、表面上ではわからない問題に対する解決策を開発するそうです。
この手法は、デプスインタビューという呼ばれ、一人にトコトン聞き込みを行います。先ほどのS化粧品会社では、この作業を3時間×5日程度の時間をかけているそうです。
サイコグラフィックとは何か(まとめ)
- サイコグラフィックスとは心理的要因のこと
- サイコグラフィックスは単体では使いにくい
- サイコグラフィックスデータを取得するためにはユーザーから直接聞くのが一番
- 水面下で調査したい場合はアナリティクスを活用
- 顧客イメージのペルソナとしてサイコグラフィックスを使うと効果的
- インサイトの発掘にはサイゴグラフィックスが重要
以上、サイコグラフィックスの解説でした。
世の中に溢れる商品コピーや広告のキャッチ―な部分って、やっぱり心理的な表現って多いですよね。
各社必死でサイコグラフィックを研究している成果じゃないでしょうか。
なによりあなたはこれで、サイコグラフィックを活用できるようになりました、今後のあなたのマーケティングライフに活用してくださいね!