御用聞き営業に対しては賛否両論があると思いますが、御用聞き営業の何がダメなのかを客観的に見てみます。 特に営業職は売上を上げてなんぼの世界ですが、御用聞きをやめないと長期的な売上は作ることはできないのです。
理由1.御用聞き営業では商品が煩雑になる
顧客のニーズに合わせた商品ばかりを扱っていると、それこそ商品数だけが多くなり、 管理面において多大な労力がかかるようになります。
気づけば100万円の売り上げを作るために、アイテム数が20アイテムになるなんてことも。
商品あたり5万円の売り上げでしかありません。
これでは、管理コストを考えると赤字になってもおかしくないレベルです。
そして、そもそも、顧客の困ったは商品で解決できるものなのでしょうか。
解決策が商品であればそれはそれで問題ないのかもしれませんが、 実際に商品であることは少ないことの方が多いです。
営業は商品やサービスを売るだけではありません。
顧客の困ったを解決する何かを提案しなければならないのです。
もしかして、売上につながらない悩みかもしれませんが、コツコツと解決することで、 必ず信頼関係が生まれてきます。
営業としては新しい商品を売りたいのかもしれませんが、 それこそ他社製品だったとしても、ノウハウで解決するのであれば、それを惜しげもなく提供するとよいでしょう。
その問題の解決には、弊社の商品じゃない方がいいという提案ができる営業こそ、信頼される営業なのです。
理由2.御用聞きではインサイトに答えられない
御用聞き営業では、顧客のニーズには答えられてもインサイトには答えることができません。
このインサイトという言葉は、営業職ではあまり聞かないかもしれませんが、マーケティング的には非常に重要な言葉です。
インサイトとは、顧客の隠れた欲求や核心のことです。
つまり、顕在化していない”本心”の部分のことです。
顧客のほとんどが、自分が本当に何を求めているのか理解していません。
消費者に、何が欲しいかを聞いてそれを与えるだけではいけない。製品をデザインするのはとても難しい。 多くの場合、人は形にして見せてもらうまで自分は何が欲しいのかわからないものだ。
これは、かの有名なアップルのCEO、スティーブ・ジョブズが言っている言葉でもあるのですが、実際にその通りだと思います。
顕在化していない核心は、誰かが形にしていないと分からないものなのです。
炭酸飲料が大好きな人はわかるでしょうが、あの初めて炭酸飲料を飲んだ時の感動です。
世の中にこんなものがあったんだ!という感動は、しっかりと心に残っていると思います。
御用聞き営業スタイルでは、このインサイトを引き出すことはできません。
だって、ユーザーの顕在化しているニーズにしか答えていないのです。
顧客は満足を得るかもしれませんが、感動を得ることは無いのです。
感動を与えるためにはインサイトを見つけ出すことが必要不可欠なのです。
”インサイト”に気付けること、これができる営業マンの必須能力なのです。
理由3.顧客は欲しいものを自分で探す
そもそも、御用聞きをするまでもなく、顧客は必要なものを自分で探しています。
何かありませんか?と営業に行ったところで、ほとんどが間に合ってますと追い返されるのではないでしょうか。
一昔前までは、外部営業との接触は、新しい情報を仕入れるための大事な場でしたが、 今や新しいものというのは、ネットでなんでも探せる時代です。
困った内容を入力し、検索ボタンをおすと、ほとんどのことが解決できるのです。
そんな時代に「何かありませんか?」なんて営業をしていても仕方が無いのはお分かりの通りです。
顧客の知らない情報を提供できてこそ真の営業マンであり、御用聞きスタイルでは顧客は振り向いてくれません。
理由4.そもそも商品自体がほとんど同じ
どこのどんなものでも似たようなものがたくさんあります。
特許商品で自社でしか扱えないとかの場合は話は変わりますが、コピー機だろうが、車だろうが、 化粧品だろうが雑貨だろうが、同じような商品がたくさん並んでいるわけです。
この中で、自社商品の機能面をアピールしたとしても、はっきりいって顧客には違いがわかりません。
それなのに、わざわざ商品を取り替えたり、カタログ内容を変えたりと、面倒くさいことをするでしょうか。
たぶん、私ならしません。顧客にそれだけの労力をかけることもしっかりと考えておかなければなりません。
結局、顧客は結果を求めています。
その商品を使ったらどうなるのか、何が分かるのか。
値段だけじゃない、求めている何かをしっかりと聞き出す必要があるのです。
実際に、過去、雑貨関係の営業をしていたことがありますが、 その時の顧客は実は社内のコミュニケーションに困っていることでした。
それを解決する手段を提案したところ、信頼関係が生まれ、商品も決めることができました。
商品がほとんど同じであれば、商品以外のところで勝負するしかないのです。
理由5.御用聞き営業では目先のことしか考えられなくなる
実は御用聞き営業は瞬発的な売上は抜群に良いのです。
相手が顕在化しているニーズに対して提案しているので、その場で売上に変えられるからです。
反面、提案営業やソリューション営業と呼ばれるものは、なかなか売上に変えられません。
インサイトを発掘してからの提案になるので、どうしても時間がかかってしまうのです。
どちらがいいかは商材にもよると思いますが、短期的な売上構築であれば御用聞きの方が良いのかもしれません。
しかし、御用聞き営業ばかり続けていると、目先のことしか考えられなくなります。
今の100万円を取るか、半年後の1000万を取るかという具合にです。
月次で予算を求められる営業マンはどうしても目先の100万円をとってしまいますが、 長い目でみると半年後の1000万の方が良いのは分かりますよね。
さらに、インサイトを見つけることによって、顧客に感動を与えることができれば、 今後、長いお付き合いができることは間違いなしです。
このように、長い目で見た方が将来的には積み重ね型の売上が作れるのです。
理由6.御用聞きは顧客との対等な関係でいられなくなる
御用聞き営業ばかりしていると、顧客が上、自分が下という関係になってしまいます。
あなたの会社の商品を買ってあげているとなったらもう最後。
あなたは一生御用聞きのままです。
ビジネスではあくまで対等な関係が推奨されます。
対等な関係でなくなった時点で、実はビジネスとしては成立していないのです。
お互いが気持ちよく、WIN-WINの関係でいるためにも、御用聞きは避けるべきです。
顧客に良くしてもらっていると思われるよう、一緒に問題解決をしていくスタイルの方が、 断然関係は長続きするため、結果的に長期の売上を築くことができるのです。
対等な関係こそが、ビジネスにおける基本ということを忘れないでください。
御用聞きは営業職の初心者向け。長期売上を積み重ねるのであれば脱却を
先ほども述べましたが、御用聞き営業というのは短期的に売上を作る場合には非常に有効です。
ひたすら営業に行きまくり、数撃ち当たる理論で人海戦術が使えるからです。
ただし、そこに本当の満足は存在しません。
真の問題を解決するために動いていないと、いつかは崩れてしまう関係です。
一生懸命新規開拓で作った取引先が、一回だけで終わってしまうなんてさみしいですよね?
顧客と一緒になって問題を解決することこそが、長期的にお付き合いするコツなのです。
通販などでは良く、LTV(顧客生涯価値)という考え方が用いられます。
要は、一回の取引でカウントするのではなく、生涯、顧客が会社にいくらお金を落としてくれるのかを考える方法です。
法人であれ個人であれ、その考え方は同じです。
つまり、長い間お付き合いしたほうが、結果的に売上に貢献してくれるのです。
長いお付き合いのためには、対等であり、お互いがお互いを必要としなくてはなりません。
このような関係を築くためにも、いち早く御用聞き営業から脱却するようにしてください。
短期の売上ばかりを見ていると、いつか足元をすくわれちゃいますのでご注意を。