あなたの会社の事業ドメインはどんなものでしょうか? はたまた新規事業なんかで事業ドメインの設定を安易にしてしまうと、 事業そのものが暗礁に乗り上げてしまう可能性もあります。 この記事が、自社の事業ドメインを見直すきっかけになれば幸いです。
事業ドメインが必要な理由
事業ドメインとは、事業を行う領域(ドメイン)のことなのはお分かりの通りです。
自社は、この領域で戦うと宣言することですよね。
事業ドメインについては正直無くても商売ができますが、個人的には事業ドメインを作ることをオススメします。
というのも、事業ドメインがあると事業がぶれにくいからです。
特に中小企業においては、資金的にも人材的にも経営資源が不足しがちであり、 この限られた資源をどのように活用するかが事業の成功に繋がるためです。
自社が「何をして」ビジネスを展開するか。
より簡単にいうと、自社が何屋で誰に対してどの範囲で事業を行うかということを決めるのが事業ドメインです。
この事業ドメインがあることで、何をするかの道しるべになり、 さらには商品だったり販路だったりの正しい選択ができるようになるのです。
しかし、事業ドメインを安易に設定してしまうと、逆効果にもなりえます。
特に失敗したままの事業ドメインで経営を続けることは、 会社存続の問題にまで発展してしまいます。
もしかしたら安易に考えているかもしれない事業ドメインを見直してみてはいかがでしょうか。
それでは、正しい事業ドメインのありかたについて事例を交えて見ていきます。
軸1:事業ドメインが広すぎてはいないか?
事業ドメインは先ほど、どこで戦うかを設定することだとお伝えしました。
このどこで戦うかというのは非常に大事なことです。
そして、失敗事例としてよく見るのは、事業ドメインが広すぎるパターンです。
「 世界の人々を食品を通じて笑顔にする 」
一見、すばらしいドメインですが、広すぎるのはお分かりいただけるでしょうか。
まず「世界の人々」についてですが、世界は広いのです。
そして、世界には様々な食文化があるわけです。
果たして、わが社はすべての食文化の人々を幸せにするぐらいのキャパがあるのでしょうか。
超一流の大企業なんかだと、なんとかなるようなドメインかもしれませんが、 世の中の8割は中小企業なわけです。
そんな大きいドメインを持つと、軸が広すぎてぶれちゃいます。
ここはぐっと小さくした方が事業ドメインとしてはやりやすいと思います。
例えば次のようなドメインにしてみてはどうでしょうか。
「 一人暮らしの食生活を支える食品を提供する 」
これの方が、ぐっとイメージしやすいと思います。
つまり、下記の点を注意することで失敗事例を成功に導くことができます。
- 失敗例:事業ドメインを広く設定しがち
- 見直しポイント:事業ドメインをちょうどよい広さにしてあげる
軸2:ターゲットをイメージで見ていないか?
このターゲットというのは、どんなものにも大切になります。
というのも、事業がイメージしやすくなるかどうかのキモがターゲットだからです。
漠然とした人をイメージするよりも、人が見えている方がどのように事業を展開した方が良いのか分かりやすいのです。
失敗事例としてはこんな感じです。
「高齢者に愛される介護サービスを展開する」
これもぱっと見、すごくいい事業ドメインですよね。
でもやっぱり、ターゲットが絞れていないのが分かります。
「高齢者」と漠然としていますが、高齢者にもいろんなタイプがいます。
そもそも、私たちがイメージしている高齢者でしかないわけです。
誰にでも使えるは、結局誰のものでもないと同意義です。
ここは、ぐーっとターゲットを絞ることをおすすめします。
「一人暮らしのお年寄りが気軽に利用できる介護サービスを提供する」
こんな感じの方が、何をしたいのか分かりやすくないでしょうか。
このように、ターゲットをきちんと絞り込むことが大切なのです。
- 失敗例:ターゲットがイメージでしかない
- 見直しポイント:具体的なターゲットを絞ってあげる
軸3:SWOT分析は客観的事実が入っているか?
事業ドメインを決めるときにSWOT分析をやるパターンが多いです。
事業ドメインを決めましょう的な文献では、必ず書かれています。
もちろん、このフレームワークが悪いというわけではなく、安易に考えてしまうと、 客観的に見ることができず、意味のないSWOT分析になっていることが多いのです。
まず、強みを誤るパターン。
ようは、自社の強みを主観的に思い込んだ強みにしてしまい、 実は世間からみると、そんなでも無かった事例です。
よく見かける事例では「 徹底した顧客主義 」なんて書いている会社が結構あります。
この徹底した顧客主義ってなんでしょうか。
仮に顧客優先の考え方が強みであるならば、具体的に書くようにしてください。
「顧客へのフィードバックは30分以内」という強みの方がイメージしやすいですよね?
弱みにしてもやっぱりあいまいなことが多く、マーケティング力なんて書いちゃいます。
だから、マーケティング力って何なんだと言いたい。
この場合でも企画系であれば「○○に向けた商品開発ができていない」の方がしっくりきます。
というか、意外とその手の本とか、コンサルとかもあいまいな表現でOKしているものが多いですよね。
ここをどれだけ具体的に書けるかがSWOT分析のキモなのです。
- 失敗例:○○主義など主観的なものに頼った分析をしがち
- 見直しポイント:客観的な数字的根拠に基づくSWOT分析をする
軸4:モノ売りではなくコト売りになっているか?
最近よく聞く「モノ」売りから「コト」売りへ。
モノとは「商品やサービス」のことを指します。
コトとは「顧客が求めているコト」のことです。
よくメーカーにありがちなことですが、商品は「モノ」だと思っている人が意外と多いのです。
自社はこの技術がすごいだったり、特許の成分があるだったりです。
でも、実際技術がすごくても、それが顧客が求めていることでなければなんの意味もありません。
顧客は技術が欲しいわけではないのです。
その技術によってもたらされる「結果」が欲しいということはお分かりの通りです。
「 あなたに愛される商品を最先端の技術を通じて提供します 」
こんな事業ドメインどうでしょう。
何の意味もありませんよね。
そもそも何をしてもらえるかがわかりません。結果もわかりません。
しかし、特に技術をもっているメーカーはこのようなドメインが多いのです。
これをコトを中心に考えてみるとこんな感じになるはず。
「 あなたの仕事時間にリラックスをもたらす商品を最先端技術で提供します。 」
これで、顧客にはリラックス効果がもたらされることが約束されました。
モノだけを見て売れる商品なんて作れません。
コトを中心に捉え、自社の技術やサービスが何を提供できるかが大切なのです。
- 失敗例:商品軸のモノにとらわれがち
- 見直しポイント:モノではなくコトを優先。顧客が求めるコトは何か考える
軸5:その事業ドメインは顧客の問題を解決しているか?
事業ドメイン策定において、顧客の問題に対し、何を使ってどのように解決するかを含めることはとても有効です。
軸4でもお話した通り、モノではなくコト。
そのコトがさらに顧客の問題に対して解決するための答えなのかをしっかりと考えてみてください。
一人暮らしのお年寄りにはどんな問題があるのか。
そして、自社の商品・サービスはその問題を解決できるのか。
仮に自社の商品・サービスが解決できないようなものであれば、そもそものターゲットが間違っています。
例えば、一人暮らしのお年寄りが困っていることは、自分で散髪に行けない事だったとします。
あなたは美容院を事業として営んでいます。
これを解決するにはどうしたらよいでしょうか。
方法は色々とあると思います。
お迎えサービスだったり出張サービスだったりなんか思いつきますよね。
これは、本質を見て解決策を考えたから得られた結果です。
もし、この顧客の問題を考えなかったらどうでしょうか。
お年寄りの髪の毛を染めてあげたらきっとハッピーだ!なんて妄想で事業を立ち上げても、 なんとなく失敗しそうな予感がしますよね。
ちなみに、事業ドメインに落とし込むとこんな感じになると思います。
「 一人暮らしのお年寄りが気軽に散髪できる出張散髪サービスを提供 」
「 一人暮らしのお年寄りが楽しくなるような毛染めサービスを提供 」
間違いなく前者の方が問題を解決してそうです。
このように、事業ドメインとは顧客の問題解決に即した形が理想なのです。
- 失敗例:顧客の問題に対して解決していない自己満足な事業ドメイン
- 見直しポイント:自社が提供できる商品は顧客の問題を解決できるのか、そして、それは事業ドメインに落とし込めるか探る
事業ドメインを見直すきっかけに
事業ドメインは、曖昧で自己満足なものでは意味のないものとお分かりいただけたでしょうか。
事業ドメインとは、事業を行う上で軸となる指針です。
間違ったベクトルに向いていると、それこそ取り返しのつかないことになりかねません。
これをきっかけに、一度自社の事業ドメインを見直してみてはいかがでしょうか。
以上、事業ドメイン策定における失敗しがち設定方法でした!