先日、世論調査により脱時間給制度の賛成・反対が取り上げられました。 42%賛成39%反対と、ほぼ拮抗している状態です。 マーケティング職にも関係がでてくるかもしれない本制度のメリット・デメリットを改めて考えてみたいと思います。
脱時間給制度(高度プロフェッショナル労働制)とは?
脱時間給制度(高度プロフェッショナル労働制)とは、政府の働き方改革の一貫として掲げている制度の一つです。
いつのまにか、横文字を使うようになってしまってさらにワケがわからなくなってしまった法案ですが、 ようは、時間給に縛られず成果で報酬をもらってねという制度であり、実際に我々の現場ではどうなるのでしょうか。
脱時間給制度が適用される対象者は次の通りです。
- 「高度な専門知識」および「労働時間と成果の関連が高くない」仕事
- 上記に関わらず年収が1075万円以上
この要件によると、人口の数%しか対象ではなく、実数で言うと20万人程度らしいのですが、 元々の原案によれば400万円以上の年収の人も対象になっていたこともあり、 いつ法律が変わるのか気になってしかたがありません。
さらに高度な専門知識というのが異常にあいまいすぎるのも恐ろしいですよね。
では簡単に「脱時間給制度」を理解したところで、それぞれのメリット・デメリットを見て見ます。
企業側のメリット
だらだら残業を防げる
だらだらと残業して残業代を稼ぐ労働者を減らすことができ、結果的に人件費の圧縮が可能です。
労働管理が成果になる
労働管理において、深夜残業だったり、時間外手当など結構面倒なもの。
脱時間給制度によって、企業が見る指標は成果となり、労働管理の時間が削減できます。
生産性の向上
労働人口がどんどん減ってきている中で、生産性というのは特に重視されます。
この制度により、一人当たりの生産性が向上することで、結果的に人員が少なくてすみます。
労働者側のメリット
自由な時間ができる
企業から求められるのは「生産性」です。
非常に効率の良い働き方をすれば、1日4時間の労働で同じ収入を得る人もいるでしょう。
自由な場所で働ける
時間的な拘束の撤廃ということは、場所にもそれが適用されます。
自宅で仕事ができる環境であれば、自宅で勤務も可能になります。
そういう意味でも、例えば会社の往復2〜3時間も労働に当てることができるため、 より効率の良い労働ができるのではないでしょうか。
成果に応じた報酬
生産性をあげれば比例して報酬も増えていきます。
今までの仕事は4時間で終わるような人であれば、倍働くことができるのです。
それでは次にデメリットを見ていきたいと思います。
企業側のデメリット
成果の設定が難しい
当たり前の話なのですが、成果の基準を明確にしておかないとトラブルの元になります。
労使でそれこそしっかりと同意を得ていないと、後で大変な目にあう可能性も。
人事制度の見直し
職位等級制度などで評価しているのであれば、それはまったく意味のないものになります。
あくまで評価基準は成果であるべきですので、課長だからとか部長だからとかが関係なくなります。
つまり、新しく評価制度を見直してあげないと、根本的にこの制度を適用することはできないのです。
労務管理の見直し
労務管理についても大幅な見直しが必要になってきます。
今のところ対象者が限定されているので、労務管理も従来型と脱時間給制度型の二つを管理しなければならないことに。
さらに、ピラミッド型の組織図と違い会社と個人との関係性が色濃くなってしまうので、そこでも煩雑になる可能性があります。
労働者側のデメリット
長時間労働の温床になるかも
時間が自由になるということは、それだけ労働が長時間になっても文句を言えません。
求められた成果に対して早く終わる場合は問題ありませんが、逆に長くなってしまう場合、 従来の働き方の方が良かったということになります。
また、成果に応じた報酬となることで、収入を得るためにさらに働く人も出てくる可能性もあります。
給与が減る
残業代を当てにしてきた人たちから見たら、給与面は減る可能性があります。
今月少し足りないから、残業しようという裏技が使えなくなるため給与は減るでしょう。
ただ、今回の対象者を見て見ると、まだそんなに気にすることはないのかもしれません。
過剰なノルマが課せられる可能性
企業からは生産性を求められるわけですから、ある意味ノルマ的なものが達成していないと報酬をもらうことができなくなる可能性があります。
報酬にそぐわない過度な成果を求められた場合であっても、無下に断ることは難しく、できないのは自己責任と言われてしまいます。
脱時間給制度の課題
企業側、労働者側のそれぞれメリットデメリットを見てきましたが、この制度自体の課題はもちろんありますので、見ていきたいと思います。
成果のあいまいさ
まず、成果をどのように設定するか。これが一番の問題ではないでしょうか。
今のところ、金融アナリストやコンサルタント業の人に限定はされていますが、 この種の業務の成果って何で測るのでしょうか。
アナリストのレポートでしょうか、コンサルタントの報告書でしょうか。
業種を絞るのであれば、それこそ成果物まできっちり決めないと、 成果がでていないという理由で報酬が支払われない可能性だってあります。
チームではなく個人商店になってしまう可能性
成果がすべてであれば、それこそサラリーマンという雇用形態をもった個人業務請負と変わりません。
個人がそれぞれ結果を出すにはいいかもしれませんが、組織での成果という指標は誰が責任をもって遂行していくのでしょうか。
仕事は個人では限界があります。
その個人を尊重しすぎて、目的である国際社会においての生産性は達成できるのでしょうか。
2018年の通常国会での提出
なんども暗礁に乗り上げたこの法案が、2018年の通常国会において議題に上がることになりました。
現在、賛成は42%、反対は39%と世論では拮抗しているようです。
今のところ、ほとんどの労働者の人には関係ない話かもしれませんが、 あくまでより詳細な対象者は法案が通ってからというのがポイントです。
つまり、法案が通ってしまえば、あとから年収400万の人も対象ね!ということができちゃいます。
400万程度の年収が対象になると、それこそ半分ぐらいの人が対象になってしまい、 成果ばかりが求められるようになると困る人も多々いるはず。
たしかに、仕事=時間ではありません。
しかし、仕事=成果でもないことはお分かりだと思います。
マーケティング職にも関係があるのか
今のところ、脱時間給制度については下記の職業に限定されていますが、 ラインナップを見てみると、どれも無視できない職業ばかりです。
- 金融ディーラー
- コンサルタント
- 金融商品の開発
- 研究開発
- アナリスト(評論家)
コンサルタントなんて、マーケティングコンサルタント普通にやります。
金融商品の開発、研究開発なんてのも、商品企画とかに拡大解釈されそうじゃないですか?
アナリストは、たとえば、Google Analyticsを分析する人はアナリストな気がします。
今のところ、このような金融関係に絞られてはいますが、 今後マーケティング系の職業は脱時間給制度の対象になりそうです。
もちろん、本制度は働きすぎないようにする施策も盛り込まれていますが、正直微妙な感じです。
でも、元々マーケターというのは、頭の中では24時間働いているようなものなので、 関係ないといえば関係ないかもしれませんが、そのうちマーケティング系も含まれる可能性は十分ありますよね。
成果と報酬が紐付くことで、正当に評価されるのであれば問題ありませんが、 必ずしも成果がでないのがマーケティング職のつらいところ。
何かしらの企画に失敗した場合、それって無報酬になるのだけは避けたいですよね。
逆に成功した場合、しっかりと報酬は上がるのかと声を大にして言いたい!
以上、マーケターに脱時間給制度(高度プロフェッショナル労働制)は関係あるのかでした。