在庫は資産だけど危ない資産
先ほど、支払と回収サイクルの話をしました。 このサイクルが最適でないと、資金繰りに苦しむというのはご理解の通りです。
その資金繰りをさらに悪くするのが、実は在庫なのです。
あなたは会社の在庫金額をご存知ですか?
購買や物流のセクションにいる人であれば、ある程度把握してるかもしれませんが、 営業や、その他のセクションにいる方は、金額まで把握している人は少ないと思います。
在庫というのは、会社の資産です。
資産というのは、会社の財産であり、売るとお金に変わるものです。 将来、その商品が売れてくれると、売上になり、売上から仕入金額を引いたものが利益になるのです。
先ほど、4月に仕入れて4月に販売した話をさせていただきました。 支払回収サイクルの差でも、あれだけ黒字倒産のリスクがあるのに、在庫が滞留しているとどうなるでしょうか。
その在庫がお金に変わるのは、いつですか?
来月ですか?3ヶ月先ですか?
もしかして、1年以上も在庫を抱えている予定ですか?
つまり、在庫を積むことをによって、回収のタイミングがさらに遅くなるのです。 支払は2か月後、でも、回収は1年後なんてことになったら、その間の資金繰りはどうするのでしょうか。
たぶん、会社にとってやばい状態になると思います。
もちろん、お金が無いからと言って、商品で支払うなんてこと、普通はできませんよね。
資産はあるけど払えない!
先ほど、在庫は資産とお伝えしました。 だけど、在庫は売上を上げてはじめて、お金に変わるのです。
こうして、なかなか現金化できない在庫の事を不良在庫なんて呼び方もします。 会社の資産としては残っているけど、使い道が無いものです。
結局は、仕入れた金額以下で販売するとか、捨てるとかして、在庫を減らすのですが、 もちろん、仕入額以下で販売することで赤字になるのはお分かりですよね。
ちなみに、与信管理などをする場合は、在庫回転率とか、資本在庫率とかを見たりします。 在庫率が高ければ高いほど、回転率が悪いということですから、危ない会社かも…となるわけです。
このように、いくら資産といっても使い道のない在庫は、会社にとってお荷物でしかないのです。
黒字倒産しないためには
支払と回収サイクルの最適化
支払と回収のサイクルをできるだけ同じにするか、支払のサイクルを先延ばしにした方が倒産リスクは減ります。 先ほどの例じゃありませんが、回収の方が早かった場合、利益の30万円を1ヶ月の間自由にできるのです。
この差って大きいと思いませんか?
その30万円を使って、新しい商品を仕入れてもいいし、設備投資をしてもいいしで、会社のキャッシュフローとしてはかなり健全な状態です。 だって、利益が先に入ってくる状態なんですから、うれしいに違いありません。
在庫過多にしない
沢山発注した方が、ロットが安くなるからとか、今だけの特価だからといって、大量に仕入れないことです。 在庫を大量に仕入れると、それだけ現金が減ります。キャッシュフローが悪くなるのはご説明の通りです。
目安として、月商の2ヵ月分未満にはしておいた方がよさそうです。
例えば、1ヶ月の売上が100万円だったとしたら、200万円までの在庫というように決めておくことです。
溢れた100万円は、資本金だったり貯金だったりで捻出することになるわけですが、在庫過多になればなるほど、キャッシュフローは苦しくなります。
会計と財務がある理由
このように、きっても切り離せない在庫と黒字倒産。 黒字倒産をさせないために、日々、財務ががんばっているのです。
意外と財務の仕事を分かっていない人が多かったので、ここで簡単に説明します。
まず、会計とは、日々の商品の仕入れだとか、売上だとかを記録することです。 もう少し狭い意味で、経理というのがありますが、これは税金の支払いとか、決算書の作成とかです。 良くある経理のイメージそのままですよね。
出張旅費が高すぎるとか。この飲み代は認めませんみたいなのです。
一方、財務の仕事はなんでしょうか。主な仕事は資金調達です。 その他、株式発行や、予算管理なんかも行いますが、資金調達がメインの仕事じゃないでしょうか。
在庫過多になってしまうと、もちろんキャッシュフローが悪くなるので、お金が足りなくなります。 そうすると、銀行にいって、お金を借りるのです。
3ヶ月だけ資金繰りやばいから貸してちょーだーい。って具合に。
銀行もただのお人よしではありませんので、貸して返せるだけの根拠を求められます。 この根拠のために、予算管理だったり、財務諸表というものを銀行に見せるわけです。
3ヶ月後にはこんだけの売掛金が回収できるから、貸してください。お願いします。お代官様って感じです。
こう見ると全然違いますよね。 なので、財務の人はよく銀行に出かけるのです。余談でした。
在庫管理を徹底こそが、黒字倒産を防ぐ道
この在庫というものは、何故か疎かにしちゃいがち。適正な在庫コントロールなんて、プロでも難しいものです。
しかし、資金繰りという面でみると、会社存続における在庫の意味はとても大きいものです。
在庫管理を物流とか購買に任せるのではなく、一人一人が在庫とは何かを把握することで、きっと黒字倒産はまのがれます。 せっかくの黒字なのですから、潰さないようにがんばりましょう!