顧客はファンになってくれればくれるほど、企業にとっては利益が生まれます。新規顧客獲得ばかりに目を向けがちですが、既存客を育成した方が双方共にメリットがあるのです。せっかくの顧客にファンになってもらうための手法と進め方を解説していきます。
顧客育成の重要性と育成ステージ
顧客レベルにはステージがあり、それぞれに対応した育成方法、戦略があります。まずはそのステージを見ていきます。
- 未知客(まだ商品すらしらない状態)
- 見込客(名前ぐらいは聞いたことあるけど?)
- 試用客(一度ぐらいは使った事あるよ!)
- 継続客(何度か使った事あるけど、他にいいものもあるしなぁ)
- 愛用客(自分的にはベストバイ!何度も使ってます)
- 信奉客(この商品しか使えません。愛してます)
企業としては、信奉客まで持っていきたいものです。Appleなんかは信奉客だらけなので、Appleが何か出したらすぐに買ってくれるお客さんをたくさん抱えています。うらやましい限りですね。
それでは、何故顧客を育成する必要があるのでしょうか。
それは、コストに直結するからです。
みなさんは、1:5の法則をご存知でしょうか。
新規の顧客を獲得するコストは、既存の顧客の5倍のかかる法則です。この表で行くと、試用客(一度でも購入いただいた顧客)と未知客(新規で獲得顧客)のコストは5倍違うのです。
信奉客に至っては出せば買ってくれるのでコストはゼロです。
このように、顧客が育てば育つほど、販促コストがかからなくなっていくわけです。
もう一つは、顧客との信頼関係を築くためです。
信頼関係が築かれると、多少のミスも許してくれます。何かしらのマイナス事案が起きたとしても、信頼関係があれば「きっとあの人は大丈夫」と思ってくれるからです。
信頼関係は決して数値では表すことはできませんが、商品もしくは企業との信頼関係は顧客育成の中で築かれていくのです。
さらに、顧客との関係が重要であることを示すLTVという考え方もご紹介します。
顧客が育つとLTV(顧客生涯価値)が上がる
LTVはLife time valueの略で、要はその顧客が一生涯にいくらお金を落としてくれるかの指数です。たった100円のお金でも、1年間毎日使ってくれれば36500円になります。
36500円/年の客単価って中々すばらしい客単価ですよね。
そんなお客さんを獲得コスト10000円で獲得できれば、十分元が取れるわけです。最初は10000円の赤字だけど、半年もたてば10000円の元がとれ、そこから利益を生む顧客になっていくわけです。
さらにその顧客と生涯お付き合いをすることで、次のような利益も生むと考えられます。
- 利用増分利益(他の商品を買ってくれるから利益が増える)
- 営業費削減利益(1:5の法則によるコスト削減)
- 紹介利益(もしかしたら他の人を紹介してくれるかも)
このように、顧客を大切に育成することで得られる利益は大きく、目先の利益よりもLTVを高めることが、将来の利益に繋がるわけです。
それでは、それぞれのステージに応じた戦略を見ていきましょう。
顧客育成のステージ別戦略
顧客のステージに応じた戦略手法をまとめています。
未知客
未知客は全く商品のことを知らない顧客です。
戦略手法としては商品理解を促進することです。
具体的には知ってもらうことを優先するため、ターゲットに対しての広告が友好的です。セグメントした顧客に対してオーディエンス
見込客
見込客はすでに商品を知っている人たちになります。
この場合、知っていても使っていない状態ですので、戦略手法としては利用を促進することです。例えば無料トライアルであったり、初回無料など、使ってもらうまでの障壁を取り除く販促をかけていくのが良いでしょう。
試用客
この顧客はすでに利用したことのある顧客です。
しかし継続していない顧客になりますので、継続してもらう必要があります。
戦略手法としては継続の打診です。
なぜ継続していないのか、商品に満足していないのか分析し、様々な手を打ちます。具体的には継続割引や誕生日の時のプレゼント、ポイント制度など、如何に継続してもらうかを考えていきます。
継続客
すでに継続して利用していただいている顧客ですので、基本としてはもっともっと信頼されるための動きをします。
戦略手法としては信頼を得るです。
信頼を得るためには、長きにわたり信用を提供していかなければなりません。つまり、商品の基本機能はもちろんのこと、保証であったりアフターサポートの充実を図ることで、顧客の信頼を勝ち取っていくわけです。
決して顧客に対して嘘はつかないようにしましょう。
愛用客
愛用客までいければ、ほぼほぼゴールが見えてきました。その顧客個人とコミュニケーションできるような施策をしましょう。
戦略手法としてはさらなる信頼を得るです。
信頼を得る為の施策としては、単純接触効果を狙って何度も顧客と接触することが理想です。ただし、顧客にうざいと思われてしまっては元も子もないので、適度なバランスが必要です。メールでのコンタクト、SNSでのコンタクトをはじめ、DMなども有効でしょう。
この場合、あなただけのプログラム感を演出することを忘れないでください。ただし、何事もバランスですので注意してください。
信奉客
もう、あなたの言うことは何でも聞いてくれる状態です。
戦略手法としては、この顧客を中の人化することが一番です。
中の人化とは、ようは商品企画に参加させて意見を頂いたり、ファンクラブを作ったりと、企業と顧客が一緒に成長する一体感を演出することです。
そうすると、その顧客はお友達を紹介してきてくれたり、炎上しそうな時に鎮火に協力してくれたりします。
最終的に企業は顧客をここまでの領域に育成したいと考えています。
顧客育成&ファン化のカギは感動
結局、どのステージにおいてもユーザーが求めているものは感動です。心を揺さぶる体験をするからこそ、顧客は成長し、企業のファンになっていくのです。
例えば映画などを見た時の感動はどうでしょうか。
良い映画の後って、余韻が残って友達にすすめたくなりませんか?
また、俳優のファンになったりもします。
このように、心が動かされる体験が育成には必要なのです。
- 友達にすすめらた
- 面白そうだから使ってみよう
- 使ってみてらめっちゃくちゃ良かった
- 友達に褒められた
- 一緒に商品を作る楽しさを味わえた
このような感動があるからこそ顧客はファンに近づいていくのです。
感動作りはストーリー作りです。
どのような感動を体験してもらうのかストーリーを考えてみるのも一つの手ではないでしょうか。ブランドストーリーについては別途記事を書いていますので、そちらを参考にしてみてください。
参考記事:ブランド価値を高めるには物語が効果的な理由とブランドストーリーの作り方
また、トラブルの際のクレーム対応も感動の体験になりえます。
何かしらトラブルが発生したとき、対応がめちゃくちゃ良かったら、何となく好きになりませんか? 実際にクレーム後に良い対応された80%以上の人が再購入に繋がるそうです。
このように、ユーザー体験を感動に変えることがファン作りには大切なのです。
共創という信頼関係の作り方
昨今、企業から一方的な情報を提供するのではなく、ユーザー同士の繋がりを大事にするマーケティング手法が増えてきました。
例えば、ネスカフェのネスカフェアンバサダープログラムなど、企業とユーザーではなく、ユーザーとユーザーの繋がりを重視した商品が販売され大成功を収めています。
これは「共創」と言われる考え方で、企業とユーザーで何かを創り上げるという考え方です。もちろん企業同士のコラボでも構いませんし、ユーザー同士でもかまいません。
このような事例から、新しい信頼関係を築く手法として、共創は注目されているのです。
商品企画戦略における顧客育成と信頼関係の作り方まとめ
商品企画戦略において、顧客育成は超重要な課題です。
特に長期間顧客になっていただくことは、企業にとってのメリットは計り知れないものがあります。顧客は勝手には育ちもしませんし、ましてはファンになんてなりません。
企業が本気になって顧客と向き合い、一緒になって成長するからこそ、顧客はその企業・商品を信頼しファンになってくれるのです。
そこには必ず感動が必要です。それぞれのステージにあった感動を企画することが、長いお付き合いのできる顧客を創造することに繋がるわけです。
信奉客に育てるためにも、まずは信頼関係を築いていくことの注力してください。
また、商品企画プロセスについては「まとめ」があります。そちらで商品企画プロセスをほぼ網羅することができますので、合わせてご確認ください。