ブランド価値を高めるためにはブランドストーリーを作ることが効果的です。 それでは、ブランドストーリーとはどのようなものなのでしょうか。 ブランド価値を高めるメリットとブランドストーリーの作り方を解説します。
ブランド価値を高めるとコストに直結する
以前、広告代理店の方から化粧品ブランド別のCPAを見せていただいたことがあります。
CPAとは、Cost Per Acquisitionの事で、コンバージョン1件当たりのコストのことです。
この資料のCPAは、顧客獲得単価として設定されていました。
ざーっと目を通してみると、驚きの事実が分かったのです。
某S化粧品会社のCPAが極端に低いのです。
化粧品会社の顧客獲得単価は、だいたい1万円~1万5千円程度です。
それがなんと、S社は1500円です。
化粧品の顧客獲得単価としては、破格の金額です。
ああ、これがブランド力なんだなと実感したものです。
S社は日本有数の化粧品会社であり、ブランド力は普通の化粧品会社に比べ10倍ということになります。
あまり、数値として実感できないブランド力は、CPAを見ることで数値化できるんですね!
意外と、ブランド力を高めるといってもイメージが難しいのですが、 このような数字を見せられると、ブランド力を高めることは、コストに直結するということが分かると思います。
つまり、ブランド力を高めることは結果的にコストを低く抑えることができるということです。
ブランド価値を高めると価格競争に巻き込まれない
これも経験としてお分かりいただけると思います。
実際、某ECサイトでブランド品と非ブランド品の化粧品を販売していたことがあります。
スペック的には、どちらかというと非ブランド品の方が高いものだったのですが、 価格については非ブランド品の方を低く設定しておりました。
もちろん、ECサイトの方で、○○ブランドよりこんなにお得というPRもしていたのですが、 ブランド品の方が売れ行きがよかったのを覚えています。
このように、ブランド品は”定価”で販売することができ、 一方、非ブランド品については、やはり価格を下げていかないと売れない状況でした。
価格競争に巻き込まれないということは、それだけ利益を多く取れるということです。
利益が多くでるということは、さらにブランド力を高めることができます。
このように、ブランド力を高めることで価格競争に巻き込まれることなく安定した利益を確保できるのです。
ブランド価値を高めるとファンが増えてくる
ファンが増えるということは、どういうことでしょうか。
先ほど、CPAの話をさせていただきました。
顧客獲得単価が1500円で驚異的な数字ということです。
では、既存客に再購入していただく場合のコストはどのぐらいでしょうか。
これは1/10程度のコストと言われています。
つまり、某S社から見ると既存客は150円程度の販促費で再購入してくれるということになります。
さらに、顧客がファン化していくにつれ、このコストは下がっていきます。
最終的にはコストではなく、ファン自らが利益を生み出すことも考えられます。
例えば、SNSでの拡散や、レビューを書いてくれたりなどの行為がそれです。
それらを販促費として換算すると、かなりの金額になるのはよくお分かりだと思います。
つまり、ブランド力を高めることでファンが増え、ファン自らがさらにブランドを拡散してくれるのです。
このように、ブランド力を高めることで、様々なメリットがあるのです。
そして、ブランド力を高めるためにはブランドストーリーが必要なのです。
ブランド価値を高めるブランドストーリーとは
ブランドストーリーとは平たく言うと、ブランドの歴史やブランドのコンセプト、ブランドの世界観などを紹介し、 共感してもらうためのストーリーです。
ブランドに対して共感してもらうためには、物語として顧客に対して伝えることが一番効果があります。
物語というのは、ドラマしかり、映画しかり、その世界に引きずり込む力がありますよね?
ブランドストーリーについても、それと同じ事が言えるため、ブランドの世界に引きずり込むためには、物語を作るのが最適ということになるのです。
ブランドにマッチしたストーリーを語ることで、顧客はブランドに引き込まれ、そのブランドの持つ世界と一つになることができます。
つまり、ブランドストーリーとは、ブランドをお客様に理解していただくための仕掛けなのです。
ブランドストーリーがもたらす効果
ブランドストーリーとは、ブランドの価値を説明する物語です。
ブランドが必要な理由でもお話した通り、ブランドを知ってもらうためにはストーリーが必要であり、 なにより、世界観そのものを共有するためには、ブランドのもつ世界に引きずり込むことが一番なのです。
そして、世界観の共有は、LTV(顧客生涯価値)という考え方にも結びつきます。
LTVとは、その場その場での顧客単価ではなく、生涯を通じて一人の顧客がもたらす価値を最大化するという考え方です。
顧客は、ブランドそのもののファンになると、生涯を通じてそのブランドに対し利益を落としてくれるようになるため、 すぐの商売には繋がらなくても、一人一人の顧客を大切にしようというものがLTVの基本的な概念となります。
このLTVを最大化するためにも、ブランドストーリーは効果的に機能します。
というのも、ブランドストーリーというのは、顧客に共感を生むからにほかなりません。
つまり、ブランドストーリーが無ければ共感を得られないばかりか、ファン化することもできないのです。
それでは、いくつかブランドストーリーに成功している企業の例題を見ていきましょう。
ブランドストーリー戦略に成功している企業
ブランドストーリーで大成功している企業といえば、スターバックスが有名ですよね。
スターバックスのコンセプトは「The third place」です。
意味はそのままで「第三の場所」というコンセプトであり、家庭と職場をつなぐもう一つの場所というコンセプトのことです。
家庭でも仕事でも忙しい現代人に、第三のくつろげる場所を提供するというのがスターバックスの伝えたいこと。
”コーヒーとやすらぎの空間でコーヒーを飲むものではなく楽しむものにした”というのがスターバックスの大成功の秘密なのです。
スターバックスは「サード・プレイス」のコンセプトを元に、コーヒー豆の調達から、お店の雰囲気、バリスタの教育まで、 すべてをストーリーとして顧客に伝えることで、顧客から共感を生むことに成功しました。
スターバックスは、豆一つとっても、豆の生産者の想い、輸送の拘り、抽出の拘りなど、すべてを物語として伝えているのです。
では、このような”物語”はどのように作られているのでしょうか。
あなたが家具メーカーだとして、ストーリーを考えてみましょう。
ブランドストーリーの例題(仮定)
あなたは、とある家具メーカーです。
こだわりは、手触りのやさしさだとします。
どのようなストーリーを考えるでしょうか。
「手触りにこだわりました。」
こんな表現では誰にも伝わりません。
なぜ伝わらないかというと、そこにストーリーが無いからです。
ここに、少しのストーリーを入れてみましょう。
”私は子供のころ、よく家具で怪我をしていました。
その度に母親が笑いながら怪我の治療をしてくれていました。
そんな母親も、すでに90歳です。
今では、家の中を歩くのも一苦労。
ある日、母親が家具に躓いて転んでしまい、大怪我をしてしまいました。
そんな母親が看病していた私に一言いいました。
「今度はあんたが私の怪我を見てくれてるんだね。」と。
そこで、ふと思い出したのです。
子供の頃、やさしかったあの母の手を。
私は思いました。その温もりを伝えたい。
そして、今も昔も転んでばかりいる家具で伝えたい。
私は母の手のあたたかさを家具で表現したかったのです。
だからこそ、手触りにこだわりました。
家具で親孝行しませんか?”
これって、なんだか共感できませんか?
イメージできるエピソードと想いが込められているからこそ共感できるのです。
この題材を元に、ストーリーの作り方をみてみたいと思います。
ブランドストーリーの作り方
ブランドストーリーを作るためには、まず共感してもらうことを目標にするとよいと思います。
ストーリーの作り方でおさえるべきポイントをいくつか紹介します。
世界をイメージできること
ブランドストーリーを作るうえで、そのブランドの世界観を顧客の頭にイメージできないと意味のないものになります。
イメージをしやすくするためには、昔話や過去の経験などを題材にもってくるとよいでしょう。
今回の例題である「怪我をしたときに治療してくれる母の手」というのは、すぐにイメージできたでしょうか?
歌の歌詞などで、最初に場所や場面が良く出てくるのは、歌の世界に引きずり込むために、イメージしやすくするためと言われています。
このように、実在する場所、誰もが体験する経験を物語に入れるというのが手法としておすすめできます。
ターゲットを明確にすること
ブランドストーリーを誰に聞かせたいかを明確にすることで、より言語化しやすくなります。
先ほどの例題の想定ターゲットは、高齢の親を持つ40歳~50歳ぐらいの男性です。
この男性が、親孝行のために母親を思い出しながら家具を送るというストーリーを考えています。
ターゲットを明確にしないと、ストーリーも曖昧なものになってしまいますので、ペルソナの設定を行うとよいと思います。
ペルソナの作り方については、下記の記事にまとめておりますので、ご参考いただければと思います。
https://damema.net/article/25/
ブランドの提供する価値を表現すること
ブランドストーリーを作るということは、すなわち、ブランドが顧客にする約束のことです。
今回の例で、提供できる価値というのは「手触り」です。
この「手触り」について、ブランドは顧客と約束をするわけです。
約束をするということは、信頼感を得ることができますが、その反面、反故にしてしまうと、信頼は一気に無くなってしまいます。
つまり、ブランドとしての約束は、ブランドの価値そのものだとも言えるのではないでしょうか。
これをどのように表現するかが、ブランドストーリー作りで大切なことなのです。
ブランドの歴史を語ること
ブランドには歴史ありというほど、歴史を入れるほうが共感されやすくなります。
ブランドの成り立ち、最初に作った商品、辛かったことなど、歴史を語ることで、ブランドの想いを表現できます。
歴史が浅い場合でも、何故その商品を作ったか、何を想って作ったかという内容は入れておきたいところ。
やっぱり、歴史とか伝統とかは、重みが違いますよね!
使っている未来を予想させること
結局、その商品を使うとどうなるの?
自分がどう変わるの? というのは誰もが知りたいことです。
その家具を使うことで、どんな生活が待っているのかを表現できるかがポイント。
事例では、母親にプレゼントして母親が喜んでる姿だったりをイメージしています。
この事例だと、家族に使ってもらって喜んでもらっているシーンなんかが連想されると良いですね!
上記のポイントをおさえながらストーリーを作ると、共感されやすい内容になります。
少し慣れが必要ですが、まずはどんなものでもいいので、作ってみることをおすすめします。
さいごに
ブランド力を高めるためには、ブランドストーリーが何故大切なのかはご理解いただけたと思います。
ブランド力を高めることはたくさんのメリットがあります。
ブランドは作るものではなく育てるもの。
最初の一歩として、まずはブランドストーリー作りにチャレンジしてみてくださいね!
以上、ブランドストーリーの作り方でした!