マーチャンダイジング。略してMDと書きますが、難しい言葉ですよね。 その言葉は使わなくても、普段からみなさんはマーチャンダイジングを行っています。 そんなマーチャンダイジングの説明と、マーケティングとの違いを簡単に説明していきます。
マーチャンダイジングとは
まずはマーチャンダイジングが何かを知らねばなりません。
マーチャンダイジングとは簡単に言うと、5W1Hで説明できます。 5W1Hとは、いつ(When)、どこで(Where)、だれが/誰に(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)の頭文字をとったものです。
つまり、置き換えると、8月(いつ)に、百貨店の店舗(どこで)にて、百貨店のお客さん(誰に)に対し、特産品(何を)を、祭事(なぜ)の名目で、対面販売(どのように)で販売します。
こういうことを決めることがマーチャンダイジングです。
すこしまどろっこしいので、さらに噛み砕くと「お客さんに、どんな商品を、いくらぐらいでどうやって提供するか」を決めることです。
例えば、”ジャパネットたかた”は、テレビの視聴者に、たかたセレクト商品を、通常よりも特価で、通販という媒体で提供するというマーチャンダイジングで大成功を収めた企業です。
小売業(スーパー)などでは、このマーチャンダイジングという言葉をよく使います。 それは小売業は主に、仕入を行い、在庫を陳列し、セールなどの時期に合わせてお客様に商品を提供する販売形態だからです。
このように、マーチャンダイジングは、お客様が欲しい商品を、ちょうどいい価格帯にし、お客様に確実に届けるよう作戦を立てることなのです。
マーチャンダイジングの5要素
先ほどの例と違い、今度は、マーチャンダイジングを学術的に説明してみます。
マーチャンダイジングを語る上ではずしてはいけないのが、マーチャンダイジングの5要素・5つの適正です。 それは、次の5つから成り立ちます。
「適正な商品」「適正な場所」「適正な時期」「適正な数量」「適正な価格」
それぞれが絶妙なバランスで成り立ってはじめて、マーチャンダイジングとして成り立つのです。 また、マーチャンダイジングとは商品施策とも呼びます。
適正な商品
当たり前の話ですが、商品として適正でないと意味がありません。 この場合の適正は、お客様が欲しいと思っている商品のことです。
いくら営業力があったとしても、商品のスペックが高いものでも、それがお客様にとって適正かどうかは別問題です。 このように、商品が適正であることが、マーチャンダイジングの要素として必要となります。
適正な場所
この場所というのも適正でなければいけません。 特に店舗においては、場所という概念が重要です。
というのも、お肉売り場の近くには、必ず焼肉のたれが置いていると思います。 もちろん、別の場所にも焼肉のたれは置いていますが、あえて近くに置いておくことで、同時に購入しちゃいませんか?
カテゴリで配置するのではなく、関連性で配置することで、購入率を上げているのです。
適正な時期
夏になると冷やし中華、冬になると鍋の元。 売り場って、季節ごとにがらりと印象が変わりますよね。
クリスマスとお正月でも、全然違います。 このように、その時期に合わせたレイアウト、売り場にすることが、適正な時期を考慮することになります。
もちろん、冬でも冷やし中華が食べたいという需要があるかもしれませんが、 需要と供給のバランスを加味した仕入しなくては在庫過多になってしまいます。
適正な数量
大量に仕入れた方が安いからといって、適正な数量ではなく過剰に仕入れると、 在庫が滞留してしまいますし、売り場のバックヤードの置き場にも困るかもしれません。
逆に少量すぎると、販売するタイミングを逃してしまい、せっかくお客様が欲しがっているものを販売することができません。 このように、どの時期にどのぐらい必要かを見極め、適正な数量を算出する必要があります。
適正な価格
お客様にとっての適正な価格とはどのようなものでしょうか。 安さだけではありません。お客様がその価格で付加価値を見出しているのであれば、安くしなくてもいいのです。
一番わかりやすい例でいくと、クリスマスのケーキでしょうか。 クリスマス時期のケーキは、クリスマスにケーキを食べるという所にお客様は付加価値を見出しているので、 多少高くても買っていきますよね。
逆に、クリスマスを過ぎたケーキは半額でたたき売られたりしています。 その時期、機能などによって、適正な価格は変わってくるのです。
このように、マーチャンダイジングでは、この5要素をバランスよく取り入れ、売り場づくりをしているのです。
次は、具体的にマーチャンダイジング戦略の考え方に触れていきましょう。
マーチャンダイジング戦略:仕入在庫サイクルの最適化
マーチャンダイジングの主な役割は、お客様と直接関わる現場(店舗など)で、 お客様がほしいと思った時に、ほしいものがあるという状況を作り出すことです。
少し難しいので、より具体的な例を考えてみます。
例えば、お客様が店舗に行きました。 テレビのCMで最近売出し中の新発売のシャンプーを購入するためです。
ところが、店舗のどこを見渡しても、その商品はありません。 店員に聞くと、人気過ぎてすぐに完売してしまい、次回の入荷は1週間後だそうです。
この事例で考えると、お客さんがほしいと思った時に、ほしい商品が無い状況なわけです。 先ほど、マーチャンダイジングとは、お客様がほしいと思った時に、ほしいものがある状況を作り出すとお伝えしました。
つまり、この状況はマーチャンダイジング的にはアウトです。
お店側が適正な在庫をしていなかった為に、せっかく買いに来てくれたお客さんを取り逃してしまいました。 さらに、次回入荷は1週間後というのは、いくらなんでも遅すぎます。
売上の初動を見て、すでに発注していないと同じような状況が繰り返されるわけです。
5要素でいうと「適正な時期」「適正な数量」の判断を誤ってしまい、お客様を取り逃がしたことになります。
さらに、マーチャンダイジングでは、もう一つ重要な側面があります。それは、販売形態と販売価格の決定です。
マーチャンダイジング戦略:販売形態と販売価格の決定
冒頭で、ジャパネットたかたのお話をしました。 このジャパネットたかたは、マーチャンダイジングで大成功を収めた企業です。
というのは、販売形態と販売価格のマーチャンダイジングで大成功した企業だからです。
具体的に見ていきましょう。
ジャパネットたかたの販売形態は、テレビショッピングによる通信販売です。 あの独特の高い声から発せられる商品紹介によって、ついつい購買意欲が湧いてしまいます。
ジャパネットたかたは、テレビというメディア(売り場)を使って、商品紹介をひたすら繰り返し、 お客様に安いとかお手頃と思われる価格帯で商品を販売してることはご存じの通りです。
まさしくマーチャンダイジングですよね。 販売形態(テレビ通販)と販売価格(一つ買うと、今ならさらにもう一つ!)を実践しているわけです。
まさに、ジャパネットたかたは主に販売面でのマーチャンダイジングの好例です。
これは、5要素でいうと「適正な商品」「適正な場所」「適正な価格」に特化した戦略とも言えます。
このように、その商品の最適価格、最適在庫、さらには売り場の店舗作りなどを総合的に行うことをマーチャンダイジングと言うのです。
マーチャンダイジングとマーケティングとの違い
マーケティングは、市場分析、商品開発、商品流通、アフターサポートなど、ほぼすべての工程を網羅しているのに対し、 マーチャンダイジングはマーケティングの上流工程は行いません。
店舗の例と、たかたの例を見ていただいても分かるように、すべては販売現場での戦略になります。
マーケティングでいうセリングに近い概念かもしれませんか、マーチャンダイジングは仕入と在庫、販売方法、販売価格までも網羅しているため、 もう少し上位に位置する概念です。
そして、マーチャンダイジングはしばしばマーケティング活動の一環として活動を行います。
例えば、マーケティングの一環としてのプロモーションがあります。 このプロモーションは、時期が決まっております。
テレビCMだったら約3ヵ月1クールとして全国ネットなのか、地方テレビなのかをマーケティングが決定していくのです。
その際、マーケティングと連動していないと、大問題なことが起きます。
先ほどの例のように、テレビでCMして売出し中なのに、マーチャンダイジングが連動していないため、欠品になったり、 適正な在庫を確保できなかったりしてしまいます。
特に、店舗ではテレビCMしている商品は、店舗にほぼある状態にしておかないといけません。
というのは、やはり先ほどの例ではありませんが、お客様がその商品を目的として店舗に訪れているのに、 その商品が無い状態だと、お客様の信頼度が下がる為です。
裏ワザとして、テレビCMなどのプロモーションを、この時期に行いますという情報を、 ドラックストアのバイヤーに伝えると、かなりの確率で商品を店舗に置いてくれるようになります。
これは、顧客の信頼を失わないようにしたいという、店舗側のマーチャンダイジングを逆手にとった戦略です。
何度も言いますが、メーカーなどのマーケティングと、お店側のマーチャンダイジングが連動していないと、 メーカーも、お店も、そしてお客様までもが困ってしまうという状況になるのです。
まとめると、マーケティングはプロモーションなどを主に担当し、マーチャンダイジングは現場での調整を主に担当します。 こう見ると、似ているようでまったく違ったものになります。
マーチャンダイジング戦略にはPOSが重要
POSデータとか、POSレジという言葉を聞いたことがありませんか?
これは、レジに商品を通すことで、自動的にデータが収集され、 今、どこの店舗にどんだけ商品があるかを把握できるシステムになります。
最近は、POSレジのIT化が進んだことで、ほぼリアルタイムにどこの地域で、 どんな商品が何個売れて、どんだけ残っているかが分かるようになりました。
その為、地域差による売れ筋商品群の把握や、商品の需要までもがリアルタイムで拾えるのです。 つまりは、時間単位で在庫の出し入れや、需要による商品発注ができるようになったのです。
このIT化により、より迅速なマーチャンダイジングが求められるようになりました。
現在のマーチャンダイジングにおいては、POSは欠すことができないぐらい重要な情報元となったのです。
マーチャンダイジングからマーケティングへ:さらに進んだPOS分析
もう少し、POSのお話をしましょう。
POSというのは、どんどん情報が積み重なります。 日々のお客様の購買情報がたまることによって、顧客動向、購買志向、地域差、季節、時間など、 様々な分野でそのデータを活用できるようになりました。
テレビCMを流したタイミングで、POSデータを分析すると、CMを流した効果が分かります。
その地域は、炭酸飲料が売れているのか、お茶が売れているのかが簡単に分かります。
価格の上げ下げによる、販売動向を見ることができます。
このように、POSデータを使うと、今後のマーケティングにも活かせるデータが分析できるのです。 そして、そのマーケティングに応じてマーチャンダイジングもますます活かしていくことができます。
マーチャンダイジングの場は、今後のマーケティングを行うにあたっての、大切な仮説検証の場でもあるのです。
マーチャンダイジング戦略は売り場によっても違う
このようなマーチャンダイジングですが、売り場に応じて、重視しているパラメータが違います。 それぞれ、何をベースにしているかで、呼び方が変わってきたりもしますので、ここでご紹介します。
ビジュアルマーチャンダイジング
アパレル業界なんかによく使われる手法です。 売りたい商品って、目立つところにすごくきれいに陳列されていますよね。
例えば、百貨店のショーウィンドウとかは、ライトアップや飾り付けまでされて、非常に目立つようにしています。
これは、ビジュアルにより適正な価格の向上を狙ったものであり、やはり売上も変わってきます。
ウェザーマーチャンダイジング
主に、気象情報をベースにした考え方です。 コンビニではよく採用されています。
例えば、梅雨の時期だと、どこのコンビニでも傘を置いていますよね。 あれは、梅雨は傘が良く売れるというデータの元、マーチャンダイジングによって傘を置いているのです。
傘は分かりやすいのかもしれませんが、例えば、翌日暑くなると予測されれば、ビールを多めに仕入れたしります。
このように、気象条件によってお客様の客足が変わるような店舗でよく採用される考え方です。
スクランブルドマーチャンダイジング
ドラックストアやスーパーマーケットなど、雑多なものを沢山取り揃えている店舗での採用が多いです。
スーパーマーケットって、食品がメインの商材ですが、キッチン用品なんかも置いていたりしますよね。 お客様のニーズによって、取り扱う商品を広げる戦略がスクランブルマーチャンダイジングです。
これは、お客様の行動パターンを分析し、一つの店舗で集約しようという考え方です。 ここに行けばとりあえず揃うといった概念を作り出すことができるので、生活習慣としての消耗品を取り扱う店舗が良く採用するのです。
マーチャンダイジング戦略とは
最後になりましたが、一通りマーチャンダイジングの意味をご理解できたと思います。
ようはお客様の要望に応えることができるように商品を取りそろえ、売り場を作ることです。 それには、5つの基本的な考えのもと、それぞれどのように配分するかがマーチャンダイザーの仕事です。
ジャパネットたかたのように、マーチャンダイジングでも「適正な商品」「適正な場所」「適正な価格」に 特化し成功した企業もあります。
マーケティングとの関連性も強いもので、マーチャンダイジングの情報がマーケティングに活かされています。
マーチャンダイジングの種類も簡単にご説明しましたが、マーチャンダイジングには答えがありません。 それぞれの売り方、売り場で一つ一つ検証していき、最適な答えを導き出していくのです。
このように、マーチャンダイジング戦略サイクルを回すことで、よりお客様ニーズに答えられる売り場づくりをすることができますので、 ぜひ、実践していただければと思います。
以上、マーチャンダイジングの説明でした!